最新記事

独裁

北朝鮮、米朝首脳会談を前に軍上層部を解任 金正恩の軍支配力を強化か

2018年6月4日(月)15時31分

 6月3日、米政府高官は、北朝鮮の朝鮮人民軍の幹部3人が解任されたと明らかにした。アナリストは、6月12日の米朝首脳会談を前に、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が経済発展を急速に進め、国際社会に対応するための動きとみている。提供写真(2018年 ロイター/KCNA)

米政府高官は3日、北朝鮮の朝鮮人民軍の幹部3人が解任されたと明らかにした。アナリストは、6月12日の米朝首脳会談を前に、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が経済発展を急速に進め、国際社会に対応するための動きとみている。

韓国の聯合ニュースは北朝鮮の軍幹部3人が交代したと伝えた。

金委員長が幹部を交代させた動機は不明だが、アナリストは、軍上層部の再編により、金氏と朝鮮労働党はこの重要な時期に、軍の支配を強めることができると指摘する。

非営利の調査・分析組織CNAの国際問題グループ責任者、ケン・ガウゼ氏は「金委員長が米国、韓国と和解し、少なくとも部分的に核開発プログラムから手を引くつもりならば、軍の影響力を抑え込んでおく必要がある」と分析。「再編により、金委員長の命令通りに動く士官が上層部ポストに就いた」とした。

北朝鮮国営メディアは先に、軍の総政治局長が金正角(キム・ジョンガク)氏から金秀吉(キム・スギル)氏に交代したと報道。

聯合ニュースによると、人民武力相は朴永植(パク・ヨンシク)氏から努光鉄(ノ・グァンチョル)第1次官に交代し、軍総参謀長も李明秀(リ・ミョンス)氏から李永吉(リ・ヨンギル)氏に交代した。後任の3人はいずれも前任者より若いという。

ジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮分析の専門家、マイケル・マッデン氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発における軍の役割が2次的なものであることを踏まえると、今回の幹部交代は金委員長が国内外の課題に直面する中で、最も信頼でき、年齢のより若い士官を幹部に昇格させる意味合いが強いと指摘する。

ソウルにある北韓大学院大学のYang Moo-jin教授は、北朝鮮軍の幹部交代について、北朝鮮の唯一の指導者としての金委員長の権限強化と、朝鮮労働党と軍との協力強化の2つを示すと指摘。「新たな軍幹部はみな若いが、能力がある」と分析した。

米政府はコメントの求めに応じていない。

韓国の統一省と国防省は報道内容の確認を差し控えた。

[ワシントン/ソウル 3日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中