就任1年マクロンの成績表
それでも直近2人の大統領(ニコラ・サルコジとフランソワ・オランド)の同じ時期の人気に比べればいいほうだ。サルコジもオランドも、高い失業率と経済の停滞というフランス病の症状を十分に改善できなかった(近年の失業率は10%前後で推移しているが、若年層に限れば20%を超える)。
アメリカのドナルド・トランプ大統領やドイツのアンゲラ・メルケル首相、イギリスのテリーザ・メイ首相らと比べても、マクロンの支持率は全く見劣りしない。今や欧米諸国の国民は総じて政治家に幻滅しているが、マクロンはこの間、いかに国民がしらけていても、民主的に選ばれた政治家なら国を導いていけることを示してきた。
今の欧米諸国では政府が無力で国民が未来に希望を持てず、それが各国に民主主義の危機をもたらしている。しかしマクロンが一連の改革で結果を出せば、少しは民主主義への信頼を回復できるかもしれない。
今のマクロンには、欧米のほとんどの指導者にはない強みがある。力強く団結した与党が議会で過半数の議席を確保している事実だ。大統領選に引き続いて実施された議会選で、REMは国民議会(下院)全577議席のうち308議席を獲得した。支持基盤は盤石で、忠誠心でも熱烈さでも、ボーイスカウトやガールスカウトに劣らぬ人たちがたくさんいる。
筆者が接触したREM所属の議員たちは、みんなマクロンそっくりだった。そして民間で「まともな」暮らしをしたい人は政治という閉鎖的世界に首を突っ込まないほうがいいと考えてもいた。
例えばボルドー出身の女性議員ドミニク・ダビド(55)。PR会社と障害者に職業訓練を提供する会社を経営していた彼女は、伝統的な政党政治ではフランスを変えることはできないと確信している。だから、かつてはサルコジに票を入れた。彼は「特別な人」に思えたからだ。
「私には4人の子供がいる」と彼女は言った。「子供を寝かしつけるときはどうするか。『おやすみ』と言って抱き締めて、それでおしまい。子供が泣くたびに駆け付けていたら、子供は決して眠らないから」
1時間にわたる取材中、ダビドは一度も社会問題や外交問題に触れなかった。話したのは予算や税金、市場改革のこと。そして職業訓練と雇用を結び付けるマクロンの計画を「革命的」と評した。彼は有言実行の男だとも彼女は言う。マクロンが「寝かしつけた子供」はもうぐずったりしない。
お世辞にも民主的なやり方とは言い難いが、マクロンはトップダウンの、フランス人の言う「垂直的」な統治を好む傾向がある。党員を思いどおりに操って、自分の業績をたたえさせているとの批判もある。