最新記事

フランス

就任1年マクロンの成績表

2018年6月14日(木)16時30分
ジェームズ・トラウブ(ジャーナリスト)

magw180614-macron02.jpg

パリで行われた反マクロンデモに、公務員は顔を隠して参加(5月22日) Christian Hartmann-REUTERS

それでも直近2人の大統領(ニコラ・サルコジとフランソワ・オランド)の同じ時期の人気に比べればいいほうだ。サルコジもオランドも、高い失業率と経済の停滞というフランス病の症状を十分に改善できなかった(近年の失業率は10%前後で推移しているが、若年層に限れば20%を超える)。

アメリカのドナルド・トランプ大統領やドイツのアンゲラ・メルケル首相、イギリスのテリーザ・メイ首相らと比べても、マクロンの支持率は全く見劣りしない。今や欧米諸国の国民は総じて政治家に幻滅しているが、マクロンはこの間、いかに国民がしらけていても、民主的に選ばれた政治家なら国を導いていけることを示してきた。

今の欧米諸国では政府が無力で国民が未来に希望を持てず、それが各国に民主主義の危機をもたらしている。しかしマクロンが一連の改革で結果を出せば、少しは民主主義への信頼を回復できるかもしれない。

今のマクロンには、欧米のほとんどの指導者にはない強みがある。力強く団結した与党が議会で過半数の議席を確保している事実だ。大統領選に引き続いて実施された議会選で、REMは国民議会(下院)全577議席のうち308議席を獲得した。支持基盤は盤石で、忠誠心でも熱烈さでも、ボーイスカウトやガールスカウトに劣らぬ人たちがたくさんいる。

筆者が接触したREM所属の議員たちは、みんなマクロンそっくりだった。そして民間で「まともな」暮らしをしたい人は政治という閉鎖的世界に首を突っ込まないほうがいいと考えてもいた。

例えばボルドー出身の女性議員ドミニク・ダビド(55)。PR会社と障害者に職業訓練を提供する会社を経営していた彼女は、伝統的な政党政治ではフランスを変えることはできないと確信している。だから、かつてはサルコジに票を入れた。彼は「特別な人」に思えたからだ。

「私には4人の子供がいる」と彼女は言った。「子供を寝かしつけるときはどうするか。『おやすみ』と言って抱き締めて、それでおしまい。子供が泣くたびに駆け付けていたら、子供は決して眠らないから」

1時間にわたる取材中、ダビドは一度も社会問題や外交問題に触れなかった。話したのは予算や税金、市場改革のこと。そして職業訓練と雇用を結び付けるマクロンの計画を「革命的」と評した。彼は有言実行の男だとも彼女は言う。マクロンが「寝かしつけた子供」はもうぐずったりしない。

お世辞にも民主的なやり方とは言い難いが、マクロンはトップダウンの、フランス人の言う「垂直的」な統治を好む傾向がある。党員を思いどおりに操って、自分の業績をたたえさせているとの批判もある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米経済活動、7地区で緩やかな拡大 見通しは全体に楽

ワールド

イラン、CIAに停戦協議打診か イスラエルは米に説

ワールド

ハメネイ師息子モジタバ師、後継有力候補との情報 米

ビジネス

プーチン氏、欧州向けガス供給の即時停止の可能性を示
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 9
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中