最新記事

廃棄物

中国の環境規制強化は喜べない? 行き場失った欧州のプラスチックごみ

2018年5月22日(火)18時55分

プラスチック埋め立てというアイデアを主張する1人が、イングランドのアクシオン・ポリマーズのディレクター、キース・フリーガード氏だ。アクシオン・ポリマーズは、自動車・エレクトロニクス関連の廃棄物において、欧州を代表するリサイクル事業者の1つである。

「埋め立て地に向かうべき炭素含有量の多い大量の廃棄物が、今はすべて大気中に放出されている。こんな『空の埋め立て』を無料で認めているのはなぜなのか」とフリーガード氏は言う。同氏は、英国プラスチック事業者連盟のリサイクル部会の副議長を務めている。

フリーガード氏はロイターに対し、「将来の資源として、良く管理された埋め立て地においてプラスチックを分別保存すべきだ」と語った。

同氏によれば、1メガワット時の電力を生産するために、廃棄物発電所では345キロのプラスチックを燃やし、880キロの二酸化炭素を放出する。対照的にガス火力発電所では、132キロの天然ガスを燃やし、わずか360キロの二酸化炭素を排出するだけで、同量のエネルギーを生産する。

ステングラー氏や廃棄物発電所を支持する諸国は、こうした計算は誤解を招くものであり、廃棄物発電は、熱波や洪水、干ばつや海面上昇の抑制に向けた2015年のパリ協定における主要目標である化石燃料の置き換えに貢献するものだと主張している。

たとえばスウェーデン政府の試算によれば、都市廃棄物3トンには、石油1トンと同じだけのエネルギーが含まれているという。

欧州委員会によれば、世界全体でのプラスチック生産量は1960年代以降ほぼ20倍に増大し、今後20年間でさらに2倍に増えると予想されている。

ナイロビに本部を置く国連環境計画のエリック・ソルヘイム事務局長は、世界的なプラスチック対策の中心は、「不必要」と思われる一部の化粧品に用いられているマイクロプラスチックや飲料用ストローなどの製品を中心に、使用量を削減していくことであるべきだ、と言う。

「必要としていないプラスチックを避けることが、どのような対策よりも優る」とソルヘイム氏。廃棄物を埋め立てて掘り返すというのは「難しい選択肢」であるように思われるという。

欧州プラスチック製品工業協会によれば、2016年に欧州で回収されたプラスチック廃棄物2710万トンのうち、41.6%がエネルギー生産に、31.1%が対中国輸出を含むリサイクルに、そして27.3%が埋め立てに回ったという。この報告によれば、リサイクルが埋め立てを上回ったのは今回が初めてである。

これに対し、米環境保護庁によれば、国土にゆとりのある米国では、2014年に回収されたプラスチック3300万トンのうち75%が埋め立てられているという。焼却は15%、リサイクルは9.5%とされている。

国連の科学者たちによる2014年の報告は、全世界において、都市からの固形廃棄物のうちリサイクルされているのは約20%にとどまり、約13.5%がエネルギー生産に用いられ、残りは投棄されていると試算している。

(翻訳:エァクレーレン)

Alister Doyle

[オスロ 11日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

与党「地滑り的勝利」で高市トレード再開へ、日経6万

ワールド

高市首相、消費減税「やった方がいいと確信」 改憲は

ワールド

自民単独300議席超、「絶対安定多数」上回る 維新

ビジネス

自民大勝でも「放漫財政にならない」=片山財務相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日本をどうしたいのか
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 5
    背中を制する者が身体を制する...関節と腱を壊さない…
  • 6
    心停止の8割は自宅で起きている──ドラマが広める危険…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 9
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中