最新記事

中国

14億人を格付けする中国の「社会信用システム」本格始動へ準備

2018年5月2日(水)17時20分
クリスティーナ・チャオ

2020年に制度が本格始動すれば、すべての中国人の行動が習近平の監視対象になる Aly Song-REUTERS

<長々とゲームをするのは怠け者、献血をするのは模範的市民、等々、格付けの高い者を優遇し、低い者を罰するこのシステムにかかれば、反政府活動どころかぐれることもできない>

中国で調査報道記者として活動する劉虎(リウ・フー)が、自分の名前がブラックリストに載っていたことを知ったのは、2017年に広州行の航空券を買おうとした時のことだった。

航空会社数社に搭乗予約を拒まれて、中国政府が航空機への搭乗を禁止する「信頼できない」人間のリストを保有しており、自分がそれに掲載されていたことに気づいた。

劉は、2016年に公務員の腐敗を訴えるソーシャルメディアに関する一連の記事を発信し、中国政府と衝突した。政府から罰金の支払いと謝罪を強要された劉はそれに従った。これで一件落着、と彼は思った。だがそうはいかなかった。彼は「不誠実な人物」に格付けされ、航空機に乗れないだけではなく、他にも多くの制限を受けている。

「生活がとても不便だ」と、彼は言う。「不動産の購入も許されない。娘を良い学校に入れることも、高速列車で旅することもできない」

国家権力による監視とランク付け

劉はいつのまにか、中国の「社会信用システム」に組み込まれていた。中国政府は2014年に初めてこのシステムを提案、市民の行動を監視し、ランク付けし、スコアが高いものに恩恵を、低いものに罰を与えると発表した。この制度の下で、エリートはより恵まれた社会的特権を獲得し、ランクの底辺層は実質的に二流市民となる。この制度は2020年までに、中国の人口14億人すべてに適用されることになっている。

そして今、中国は劉のように「悪事」を犯した数百万人に対し、鉄道と航空機の利用を最長1年間禁止しようとしている。5月1日から施行されるこの規則は、「信用できる人はどこへでも行くことができ、信用できない人は一歩を踏み出すことすらできないようにする」という習近平国家主席のビジョンを踏まえたものだ。

これは近未来社会を風刺的に描いたイギリスのドラマシリーズ「ブラックミラー」のシーズン3第1話『ランク社会』のプロットにそっくりだ。ドラマはSNSを通じた他人の評価が実生活に影響を与えるという架空の社会が舞台だが、中国において暗黙の脅威となるのは、群衆ではなく、国家権力だ。

MAGAZINE

特集:ニュースを読み解く 哲学超入門

2019-5・28号(5/21発売)

トランプ現象、移民、監視社会、SNS...... AIも解答不能な難問にあの思想家ならこう答える

人気ランキング

  • 1

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はいま......

  • 2

    元TBSアナ久保田智子:不良だった私が東大に入るまで

  • 3

    アメリカがイランを攻撃できない理由──「イラク侵攻」以上の危険性とは

  • 4

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 5

    「イランは終わりだ!」バグダッドの米大使館付近へ…

  • 6

    【特別寄稿】TBSアナ久保田智子「私の広島、私達のヒ…

  • 7

    「幸せな結婚生活」の科学 研究者夫妻が導き出した…

  • 8

    学力格差より深刻な、低所得層の子どもの「自尊心格…

  • 9

    徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点

  • 10

    イランも臨戦態勢に──戦争を避ける最後のチャンス

  • 1

    徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点

  • 2

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の容疑者が再犯 少年法見直しの議論は海外にも 

  • 3

    「人肉は食べ飽きた」と自首した男と、とんでもない「仲間」たち

  • 4

    トランプの言うことは正しい

  • 5

    アメリカがイランを攻撃できない理由──「イラク侵攻…

  • 6

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 7

    10%の食塩水1kg作るのに必要な塩と水は? 大学生が「%…

  • 8

    ジョンベネ殺害事件で、遂に真犯人が殺害を自供か?

  • 9

    「古代マヤの宇宙飛行士」説、アメリカで再浮上?

  • 10

    強気の米中、双方に死角あり「アメリカはまずい手を…

  • 1

    徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点

  • 2

    「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    59歳の人気ランジェリーモデルは5年前まで普通のお母…

  • 5

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の…

  • 6

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 7

    おどろおどろしい溶岩の世界!?木星の北極の正体が…

  • 8

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 9

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 10

    エイリアンはもう地球に来ているかもしれない──NASA…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
広告営業部員ほか求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月