最新記事

多国籍企業

コカ・コーラと米税務当局が追徴課税めぐる紛争 「移転価格」課税に世界が注目

2018年4月9日(月)10時09分

4月1日、米飲料大手コカ・コーラは、海外の系列企業から徴収する商標ロイヤルティの適正金額について内国歳入庁(IRS)と係争状態にある。写真はコカ・コーラのトラック。バージニア州で2012年10月撮影(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

米飲料大手コカ・コーラは、海外の系列企業から徴収する商標ロイヤルティの適正金額について内国歳入庁(IRS)と係争状態にある。

同社としては昔の話し合いで決着していたと考えていたところ、2015年にIRSから33億ドルの追徴税を請求されて驚がくし、連邦租税裁判所に異議を申し立てたためだ。

審理終了は今月半ばだが、判決が下されるまでにはその後しばらくかかると見込まれている。

多国籍企業による製品やサービス、商標、特許などのいわゆる「移転価格」に関する課税を巡っては、厳格な国際基準が新たに設定され、各国の税務当局がかつてないほど監視を強めており、企業や株主にとっては法的なリスクが増大しつつある。こうした状況だけに、コカ・コーラとIRSの争いには、税専門家の注目も集まっている。

IRSの主張では、コカ・コーラがいくつかの海外系列企業に2007─09年に課したロイヤルティはあまりに低過ぎて、同社の米国内における収入を実態よりも目減りさせたので、33億ドルの追徴税が発生したという。

税務当局はしばしば、税率の高い国の収入を最小化し、税率の低い国で最大化するような企業の移転価格を設定にクレームをつけている。

経済協力開発機構(OECD)が16年に定めた国際的な取り決めでは、IRSを含めた100カ国の税務当局は、移転価格を「独立企業間価格」、つまり資本や人的関係のない企業同士の取引に用いる価格で算定することにしている。

もっともコカ・コーラのような商標権の場合、その特異性ゆえに独立企業間価格」の適切な算定が難しいという問題を抱える。

コカ・コーラは裁判所に提出した文書で、IRSは同社に移転価格設定方式を1996年の合意で認めたのに、その後承認措置を撤回して追徴税納付書を通知してきたと説明している。

ただコカ・コーラとIRSが合意した20年余り前とは移転価格を取り巻く状況は様変わりした。かつてIRS長官代行を務めたスティーブン・ミラー氏は「興味深い事案だ。もしわたしが税務担当役員なら、(20年余り前の)こんな合意の枠組みがどれほど頼りになるか考え込んだだろう」と語り、いつまでも過去の合意を当てにしていたコカ・コーラの姿勢に疑問を投げかけた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

金正恩氏が列車で北京へ出発、3日に式典出席 韓国メ

ワールド

欧州委員長搭乗機でGPS使えず、ロシアの電波妨害か

ワールド

ガザ市で一段と戦車進める、イスラエル軍 空爆や砲撃

ワールド

ウクライナ元国会議長殺害、ロシアが関与と警察長官 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中