最新記事

中台関係

中国が台湾海峡で実弾演習

2018年4月19日(木)18時58分
トム・オコナー

4月12日にも、中国海軍は台湾近海で軍事演習を行った(写真上はソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦、下は056型コルベット〔小型護衛艦〕) 81.cn

<中国は台湾海峡で大規模な軍事演習を実施、「台湾独立」を力で阻止する姿勢を鮮明にしている>

中国軍は4月18日、福建省沖の台湾海峡で実弾演習を実施した。

福建海事局は4月12日、中国軍が4月18日の午前8時から深夜にかけて実弾演習を実施するため付近の海域の一部を航行禁止にする、と通知した。中国で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の劉結一主任(閣僚級)は、演習の目的について「祖国の主権と領土を守るためだ」、と中国の国際放送組織「中国グローバルテレビネットワーク(CGTN)」に語った。南シナ海で軍事プレゼンスの拡大・強化を続ける中国は、軍事力を誇示することで「台湾独立」を封じる姿勢を鮮明にしている。

劉は4月18日に北京で台湾の傅崐萁・花蓮県長と面会した際、「(台湾を中国の不可分の領土とする)一つの中国の原則を堅持し、あらゆる形の台湾独立に断固反対」するよう台湾側に要求した。中国外務省の華春瑩報道官も、定例記者会見でその部分を強調した。

「世界に中国は一つしか存在しない。台湾は中国の不可分の領土だ」

アメリカは1979年に台湾と断交し、中国共産党率いる中華人民共和国を中国で唯一の合法的政府と認めた。だがアメリカはそれ以降も台湾に武器売却を続け、ドナルド・トランプ米大統領は就任前の2016年12月、中国に配慮する慣例を破り、台湾の蔡英文総統がかけてきた当選祝いの電話に応じた。今年3月には、米共和党議員が中心となって、アメリカと台湾の閣僚や高官の相互訪問を促す「台湾旅行法」が成立。中国の猛反発を招いた。

相次ぐ演習

中国は昨年、台湾付近での軍事演習を増加させた。習は3月20日、全国人民代表大会で行った演説で、台湾を中国の一部とする自国の主張に逆らう試みは「必ず失敗」し、「歴史の処罰」を受けることになる、と言った。中国軍は3月、福建省沖に1000人の海軍兵士を集結させて最大規模の軍事演習を実施。4月12日にも南シナ海で史上最大規模の海上軍事パレードを行い、習が空母打撃軍の訓練を視察した。彼はその際、4月18日に台湾海峡で演習することを予告し、海軍の増強は「緊急課題だ」と訓示した。

中国共産党機関紙人民日報系の環球時報によれば、台湾海峡での演習には独立志向の強い台湾政府を牽制する狙いがあるのか、という記者の問いに対し、中国で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室の馬曉光報道官はこう言った。「中国は自国の主権と領土を守るため、台湾独立につながるあらゆる行為を徹底的に排除する決意だ」

台湾外交部は4月18日、中国のH6K爆撃機や戦闘機ストイ30が遠洋訓練のために宮古海峡上空を通過して西太平洋に向かった、と明らかにした。中国軍による同様の訓練は「珍しくない」という。台湾国防部の陳中吉報道官は中国を批判してロイター通信にこう話した。

「中国はなにかにつけて、中華民国(台湾)を俗悪な言葉で脅し、武力による威嚇を繰り返している。われわれの士気に悪影響を及ぼし、社会不安を引き起こしたいからだ」

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

訪日客の売り上げ3割減 6月、高島屋とJフロント

ビジネス

ヤゲオ、芝浦電子へのTOB期間を8月1日まで延長 

ワールド

トランプ政権、不法移民の一時解放認めず=内部メモ

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に失望表明 「関係は終わって
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 2
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 3
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 6
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 7
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 10
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中