最新記事

中国社会

「同性愛コンテンツ」規制を撤回させた、中国LGBTパワーは本物か

2018年4月27日(金)16時30分
ジェームズ・パーマー

昨年11月に香港で実施されたLGBTの権利擁護を求めるプライドパレード Bobby Yip-REUTERS

<中国版ツイッター、ウェイボーの同性愛に関するコンテンツ削除の決定は覆したものの、このまま市民への追い風が吹き続けるとは思えない>

中国版ツイッターの微博(ウェイボー)は4月13日、「違法コンテンツ一掃キャンペーン」の一環として、同性愛に関するコンテンツの削除を発表。ところが、わずか3日後にこれを撤回した。

これは、LGBT(性的少数者)のユーザーとその支持者たちがオンラインで大規模な抗議活動を展開した結果。同性愛を暴力やポルノと同一視して「望ましくないコンテンツ」とする規制に対しては世論の反発も高まり、微博を撤回に追い込んだ。

この方針転換は、貴重な勝利だ。中国最大のSNSとして、議論や異議申し立て、腐敗の暴露の媒体となってきた微博への締め付けが始まったのは12年。以来、オンラインの言論に対する圧力は強まっていた。

微博が抑え込まれると、ユーザーは微信(ウェイシン、WeChat)などのサービスに乗り換えた。すると、今度は微信が締め付けの対象になった。

今回の勝利の理由は分かりやすい。政府は同性愛の問題を特に気に留めてもいなかったが、世論の関心は強かったということだ。

中国政府の同性愛嫌悪は、例えばロシアやウガンダのようにゲイの男性が忌み嫌われるほどひどいものではない。中国当局はLGBT団体に不快感を抱いているが、敵視しているわけではない。

「長年、LGBTの権利に対する政権からの強い締め付けはなかった」と、深圳に拠点を置くジャーナリストのアダム・ロビンズは言う。「代わりに中国は『奨励せず、抑え込まず』という政策を取った」

中国でLGBTの権利に対する姿勢を形づくったのは、主に外国のメディアだった。とりわけ欧米のテレビ番組や日本の漫画、そして次第に大きくオープンになりつつある国内のLGBTコミュニティーの力が大きい。だが人権一般や少数派の抑圧といった他の問題には、今も政府当局から激しい圧力がかかる。

寛容な姿勢はいつまで?

そもそもLGBTは、なぜ弾圧されそうになったのか。中国のメディア規制は、上からの命令と、政府への追従を示そうとする企業側の自己規制が混在している。

企業側としては「適切な姿勢」を示さないと危険が伴う。あるソーシャルメディア企業は先日、オンラインコンテンツの管理が不十分だったことに対して涙ながらの謝罪をする羽目に陥った。今後は数千人の検閲担当者を雇い、「社会主義の基本的価値観」を適切に尊重することを約束した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタ、前期の会長報酬19億円超で最高更新 政策株

ビジネス

英CPI、5月は+3.5%で予想と一致 食料品が1

ビジネス

午後3時のドルは145円付近で売買交錯、中東情勢に

ビジネス

米関税、韓国の国内物価に下押し圧力も 中銀が指摘
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 3
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火...世界遺産の火山がもたらした被害は?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 6
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 7
    【クイズ】「熱中症」は英語で何という?
  • 8
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 9
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中