最新記事

テクノロジー

EV時代到来、素材の覇権をかけ鉄とアルミが激突

2018年4月4日(水)17時45分


バッテリーの性能改善

だが、アルミニウムが鉄鋼よりも高価であることに変わりはない。

自動車に使用されるアルミニウムと鉄鋼の価格差はかつてほど大きくはないが、鉄鋼使用によるコスト削減効果は依然かなり大きいと業界専門家は言う。

一方、EV用バッテリーの高性能化や低価格化、動力源装置と全体的な構造設計の発達により、航続距離を延ばすための軽量化を狙ってアルミを使う必要性は低下してきた。

アルマグによれば、2010年以降、バッテリーのコストは1キロワット時あたり1000ドルから同114ドルまで下落し、今後数年でさらに安くなると予想されている。

「自動車メーカーは、バッテリー価格が低下するなかで、全面的に鉄鋼を採用しても航続距離の要件を満たせるという結論に達しつつあると思う」と、世界鉄鋼協会の自動車用鋼板部会のテクニカルディレクターを務めるジョージ・コーツ氏は述べている。

自動車の中で動力を生み出す主要装置であるパワートレインの改善も、大きな影響を与えている。

日産「リーフ」2017年モデルの航続距離は、2011年モデルに比べ50%近く伸び、172キロに達した。マッキンゼーのエリケス氏によれば、これは主としてパワートレインの改善によるもので、4つの独立したシステムを1つに統合したことが功を奏したという。

素材のミックス

同時に、鉄鋼産業では高性能の高強度鋼材(AHSS)製品を開発してきた。通常の鉄鋼よりも強く、軽く、そして何よりも重要なことに、アルミニウムより低価格だ。

「独ティッセンクルップやアルセロール・ ミタルといった(鉄鋼)企業には、おとなしく市場シェアを譲る気はない。素材をめぐる戦いが起きるだろう」と独アルマグのパートナーであるヨースト・ゲートナー氏は語る。

今後のモデルは、さまざまなグレードの鉄鋼、アルミニウム、カーボンファイバー、マグネシウム、プラスチックなど、複雑な素材構成になる可能性が高い、と自動車メーカー各社やコンサルタントは予想する。

BMWは「i3」「i8」といったモデルで高価なアルミニウムやカーボンファイバーをふんだんに使っているが、将来のEVモデルでこれらの素材の使用を増やすことは計画していないとロイターに語った。

「(将来のEVに関しては)『すべてを1種類の素材で』というソリューションはない」と同社はメールで回答。「今後も、素材それぞれの固有の長所が活かせるような方法・分量で使っていくつもりだ」

(翻訳:エァクレーレン)

Eric Onstad

[ロンドン 27日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプのイラン攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月10号(3月3日発売)は「トランプのイラン攻撃」特集。核・ミサイル開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。アメリカとイランの全面戦争は始まるのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏が5000トン級駆逐艦視察、ミサイル試験も

ビジネス

モルガンSが2500人削減、3%に相当 全部門対象

ワールド

米上院、トランプ氏の対イラン戦争権限制限案を否決 

ビジネス

米経済活動、7地区で緩やかな拡大 見通しは全体に楽
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中