最新記事

ロシア

火災で暴かれたロシア官僚の病的な習性

2018年4月2日(月)19時30分
マクシム・ トルボビューボフ(米ケナン研究所上級研究員)

トゥレエフは15年の知事選で得票率97%で再選されていたが、事件への悲しみと怒りを示すためデモに参加した有権者のことを「トラブルメーカー」扱いした。一般市民とは違う「反体制派」だと言ったのだ。

また、同州のセルゲイ・チビリョフ副知事は自分の目の前に立ちはだかった男性に向かって「若者よ、君はこの悲劇を自己PRのために利用しようというのか?」と言った。

男性は「私の家族は皆死んだ」と答えた。彼は、妻と3人の幼い子供、そして妹を火災で失った遺族だった。

その後チビリョフ副知事は中央広場で自分を取り囲んだ人々に対し、ひざまづいて当局が家族の死を防げなかったことへの許しを請うた。

これは副知事の中の人間らしさが、官僚として身にまとった鎧を突き破って外に出てきたということだろう。彼の当初の反応はまさに、お上の許可のない草の根活動に対するロシアの官僚の「あるべき反応」だった。

今回に限らず、非常事態に見舞われたロシアの官僚の行動からは、彼らが守るべき「教義」とは何かがうかがえる。


・脅威はロシアという国のコントロール範囲外(外国の工作員や過激派など)からしか生まれない。

・外国の勢力はテロ行為や自然災害、人災を利用してロシアという国の弱体化を図ろうとすることがある。この脅威に対応することは、例えば犠牲者や被災者に緊急援助を提供することと同じくらい重要で、優先順位第1位と言ってもいい。

説明責任は上に対してのみ存在する。公務員は一般市民ではなく上司に対してのみ説明責任を負う。というのも、市民向けの説明責任と上司向けの説明責任は相容れないからだ。

・お上の許可を得ていない運動や、ソーシャルメディアを介した誰の指示にもよらない情報の流布は何であれ脅威である。出所が国家にとって未知の情報源であれば、それは敵対的で外国がカネを出している可能性が高い。

トップに立っているのが誰であれ(プーチン自身も含めて)、官僚たちは心からこの「教義」を信奉しており、日々その教えに従って行動している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

有志連合のウクライナ安全保障、拘束力ある約束含む 

ビジネス

中国人民銀、今年預金準備率と金利引き下げへ 適度に

ワールド

スイスのバー火災、19年以降安全点検なし 首長が謝

ワールド

中国、軍民両用品の対日輸出禁止 「高市発言」に新た
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 6
    スペイン首相、アメリカのベネズエラ攻撃を「国際法…
  • 7
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 8
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 9
    野菜売り場は「必ず入り口付近」のスーパーマーケッ…
  • 10
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 10
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中