最新記事

ヘルス

10代の若者の外食依存はとくに体に悪い

2018年4月2日(月)17時04分
カシュミラ・ガンダー

プラスチック製品に囲まれたファストフードには「あの物質」が染み出しているかも da-kuk/iStock.

<外食やファストフードでは、製造・販売過程に使うプラスチックから染み出す化学物質によってがんなどのリスクが高まることが、最新の研究で明らかになった>

外食が多い人ほど、ある有害な化学物質をたくさん摂取し、がんなどの病気に罹るリスクが高まる。なかでも妊婦と子供と10代の若者は影響を受けやすい──そんな研究結果が明らかになった。

外食があまり健康的でないのは既に常識だが、今回の研究で注目したのは化学物質の「フタル酸エステル」だ。プラスチックを軟らかくして容器などに形成しやすくし、強度も高めるために使われる。食品容器や持ち帰りボックス、店員が使うゴム手袋、製造工程で使うプラスチック管など、外食産業のありとあらゆる場所で使われている。それがプレスチックから溶け出して食品に混入すると、ホルモンに悪影響を及ぼす。既に多くの研究で、数種類のフタル酸エステルが、乳がんや2型糖尿病、不妊症などを引き起こすことが明らかになっている。

ジョージ・ワシントン大学とカリフォルニア州立大学バークレー校とサンフランシスコ校の研究者らは、米国民健康栄養調査(NHANES)が「過去24時間に食べた物」について2005~2014年に集めた1万253人分のデータを分析。フタル酸エステルの尿中濃度を調べて、食事との相関関係を調べた。その結果、レストランやカフェ、ファストフード店などで日常的に外食していた人は、自宅で料理をして食べた人と比べて、尿中のフタル酸エステルの濃度が35%高いことがわかった。

見過ごされていた危険

外食が尿中のフタル酸エステルの濃度に最も大きく影響していたのは、10代の若者だ。食事のほとんどを外で済ませた若者は、家で食べた若者と比べて55%も高かった。

「妊婦と子ども、10代の若者は、ホルモンに有害な化学物質の影響を受けやすい。彼らがフタル酸エステルを摂取しないための対策が必要だ」と、今回の研究を率いたカリフォルニア州立大学バークレー校公衆衛生大学院のジュリア・バーシャフスキー教授は言う。

「フタル酸エステルの元凶の1つが外食だったことは、これまで知られていなかった」と、ジョージ・ワシントン大学ミルケン公衆衛生大学院のアミ・ゾタ准教授は言う。製造工程や販売の段階で、食品にフタル酸エステルが入り込むのをどうすれば防げるか、さらなる研究が必要だという。

「過剰反応は禁物だ」と、英糖尿病協会の報道官であるアイスリング・プゴットは本誌に語った。「たまにファストフードを買って食べる程度なら、人体に長期的な悪影響を及ぼす可能性は低い。それでも、できるだけ家で料理したものを食べるに越したことはない」

フタル酸エステルの摂取を減らす責任は、民間よりむしろ政策当局にある、とゾタは言う。だが家で料理を作るようにすれば、政策を待つ必要もない。「砂糖や、体に悪い脂肪や塩の摂取も減らせて、一石二鳥だ」

(翻訳:河原里香)

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米シカゴ連銀総裁、前倒しの過度の利下げに「不安」 

ワールド

IAEA、イランに濃縮ウラン巡る報告求める決議採択

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中