最新記事

事故

ヤマ場迎えた自動運転車 完全自動化への法律改正とウーバー車の死亡事故

2018年3月22日(木)16時20分

3月19日、米アリゾナ州で配車大手ウーバー・テクノロジーズの自動運転車が衝突事故が起こし、女性1人が死亡した。写真はウーバーが開発中の自動運転車のカメラ。ペンシルバニア州ピッツバーグで2016年9月撮影(2018年 ロイター/Aaron Josefczyk)

米アリゾナ州で配車大手ウーバー・テクノロジーズ[UBER.UL]の自動運転車が衝突事故が起こし、女性1人が死亡した。完全な自動運転車の事故で死者が出たのは初めてで、業界は消費者からの安全面への信頼獲得や規制緩和の実現で正念場を迎えた。

自動運転車業界が以前から懸念していた事態が、規制緩和への取り組みを進める微妙なタイミングで現実になった。ウーバーとアルファベット傘下グーグル系のウェイモは16日、数週間以内に自動運転車の規制見直しを承認するよう求める書簡を上院議員に送ったばかりだった。

ウーバーやゼネラル・モーターズ(GM)、トヨタ自動車<7203.T>など自動車メーカーやハイテク企業は自動運転車技術に多額の投資を行っているが、その成否は免許を持つ人間が運転するという前提でつくられた現行の安全規則の大幅な見直しが実現するかどうかに掛かっている。

自動車やハイテク業界の幹部は、自動運転車の絡む事故が起きて死者が出るかもしれないと警告する一方、交通規則を守るようプログラミングされた自動運転車が普及すれば、ドライバーによるわき見運転や居眠り運転が減り、多数の人命が救われると主張している。

米国家運輸安全委員会の委員長だったマーク・ローゼンカー氏は19日、ウーバー車の事故に過剰に反応すべきではないと述べた。ローゼンカー氏によると、米国では年に600万件以上の衝突事故が起きて4万人近くが死亡し、歩行者の死者は6000人に上る。「自動運転車の安全性に対する信頼を取り戻すために、今回の残念な事件を乗り越えなければならない」と言う。

ウーバーは今回の事故を受けて自動運転車の試験を全て中止した。

事故の発生により、民主党議員の反対で行き詰まっていた自動運転車の試験走行加速に向けた法案整備は、進捗が一段と遅れたり内容が修正されたりする可能性がある。

上院商業科学運輸委員会のジョン・スーン委員長(共和党)は今回の事故について「自動運転車に即した法律や政策の必要性が浮き彫りになった」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

植田日銀総裁が岸田首相と会談、円安「注視していくこ

ビジネス

英建設PMI、4月は約1年ぶり高水準 住宅部門は不

ワールド

イスラエル軍、ラファ検問所のガザ側掌握と発表 支援

ビジネス

アングル:テスラ、戦略転換で幹部続々解雇 マスク氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中