最新記事

中国

ウイグル絶望収容所の収監者数は89万人以上

2018年3月13日(火)15時15分
水谷尚子(中国現代史研究者)

18年2月12日の報道では、ウルムチ在住だったカリビネル・トフティは「子にイスラム的な名前をつけているウイグル人は、改名させなくてはならない」との政府方針に従わなかったことを理由に、夫婦共に収容所送りとなった。彼らの3人の子ども達が全て消息不明だと、国外の親族が探している。

17年10月13日の報道で、南新疆の孤児院の職員は場所と施設名を未公開とする代わりに、比較的詳細を語っている。「両親が再教育施設収監のために孤児となった生後6ヶ月から12歳までのウイグル人の子ども達を預かっているが、突如として増えた子ども達であふれかえり、仔牛の群れを小屋に入れて飼育しているような状態だ」「福祉が追いつかず、週に一度だけ肉を使った食事を出せ、それ以外は基本的におかゆだけだ」「施設は厳重に制限され、外部者が施設内に入れない」

17年8月9日の記事によると、イリ(グルジャ)県法政局職員がインタビューに答えて、「収容者最年少は15歳」と証言し、学童期の子どもまでが収容所に入れられていることが判明している。

18年3月9日報道によると、カシュガル地区ユプルガ県で、先週収容所に「再教育」収監中であった17歳の少年が死亡し、遺体となって家族に返される事件が起こった。少年は同県イェキシェンベバザール村第12集落のナマン・カリの息子、ヤクプジァンで、家族に死因の説明はなく、「直ちに埋葬するように」との命令だけ受けた。家族は死因も分からず、警察官が立ち会って遺体を埋葬したという。

「親戚が収容所送りとなり、小学生の子ども達だけが取り残されている」との証言は、在日ウイグル人の中からも伝わっている。ある在日ウイグル人は「学校の先生だった私の父の姉夫婦が収容所に送られ、小学生の子どもが残され、親戚が面倒を見ていると信じている」という。

親族との連絡も途絶えており、子どものために帰国すれば、本人が拘束される恐れもあり、日本に連れてくることさえできない。「長期に親がいない歳月は、幼子にとっては死に別れたと同じぐらいの精神的ダメージだ」と嘆く。身内を「人質」として取り上げられているウイグル人たちは、顔を出して話をするのを恐れる。それでも「黙ってはいられない」と私に語りかけてくれる。

「シリアの戦場でさえ、シリア人たちはネットを通じて家族は連絡をしあっているのに」と嘆くウイグル人に、私は掛ける言葉もない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド北部で大雨による洪水・地滑り、30人以上死亡

ワールド

台湾、新経済部長に元TSMC取締役

ビジネス

米クラッカー・バレル、トランプ氏らの反発受け旧ロゴ

ビジネス

三菱商、洋上風力発電計画から撤退 資材高騰などで建
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 7
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 8
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 9
    「ありがとう」は、なぜ便利な日本語なのか?...「言…
  • 10
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中