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お騒がせベルルスコーニが、3月総選挙で返り咲き?

2018年2月26日(月)11時10分
ジョン・フット

ベルルスコーニがテレビを活用して権力の座に上り詰めたとすれば、五つ星はインターネットを使って政権奪取を目指す。その主張は過去のベルルスコーニよりも過激で、既存の政治を徹底して拒否する。自分たちは左派でも右派でもないと主張し、既存政党との連携は断固として拒んでいる。

そしてもちろん、五つ星はEU嫌いだ。総選挙を意識して、今はやや穏健な姿勢を見せてもいるが、本質は変わらない。ベルルスコーニはこの点を突き、五つ星運動が政権を取ったら大変だ、それを阻止できるのは自分だけだと触れ回っている。

今回のベルルスコーニは中道右派勢力の緩やかな連合を率いて、成熟した穏健な指導者のイメージを打ち出している。なにしろこの四半世紀で3度も政権を担った男、彼がイタリア政界で最も「なじみの」顔であることは間違いない。しかも自分より過激な左右の新興勢力が台頭してきた結果、今のベルルスコーニの立ち位置は相対的に中道と言えなくもない。

ちなみに、今のイタリア政界で最右翼に位置するのは北部同盟を率いるマッテオ・サルビニで、彼は極端な移民・難民排斥を唱えている。

それでも政治は変わらず

地中海に面するイタリアが、北アフリカから海を渡ってくる大量の難民の上陸地点となってきたのは事実だ。難民受け入れの負担は重く、国民の間には不満がたまっているから、北部同盟の主張は受け入れられやすい。

それに、この国ではムソリーニ以来のファシズムが完全に死に絶えてはいない。ベルルスコーニ自身も、90年代には極右のネオ・ファシスト勢力と手を携えていた。そんな彼が、今は極右と手を切ることで中道派の支持を得ようとしている。

ベルルスコーニは今回も、インターネットよりテレビを通じて自分を売り込もうとしている(ツイッターも始めたが、あまり得意ではないようだ)。そうすれば昔とは違う自分の姿を見せられる、あるいは昔のことは忘れてもらえると信じているらしい。

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