最新記事

平昌五輪

平昌五輪、氷点下のスタジアムに4時間以上座る開会式

2018年2月9日(金)16時30分
佐々木和義

寒さに備えるボランディア Mike Blake-REUTERS

<いよいよ平昌冬季五輪の開会式が開催されるが、予想を上回る不人気で部屋が埋まらないほか、平昌五輪の最大の課題は寒さだ>

平昌冬季五輪の開会式に出席する安倍首相は、江陵(カンヌン)に隣接する江原道の襄陽(ヤンヤン)国際空港に降り立った。同空港を利用する首脳の入国は2002年の開港以来はじめてで、中大型機の運航がほぼなかった襄陽国際空港は、五輪に合わせて保安活動を強化したばかりである。

五輪に合わせて韓国を訪問する要人は、ドイツのシュタインマイヤー大統領、オランダのルッテ首相、スウェーデンのカール16世グスタフ国王、リトアニア、エストニア、ラトビアのバルト3国の大統領など21の国と機関の26人だが、朝鮮半島を取り巻く米国・中国・日本・ロシアの4カ国からは日本の安倍晋三首相ただ1人で、各国首脳より北朝鮮の高官や選手団に関心が集まっている。

憲法上の元首である金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長とともに金正恩朝鮮労働党委員長の実妹金与正(キム・ヨジョン)氏が訪韓した。故金日成国家主席の直系親族の韓国訪問は分断後はじめてである。

予想を上回る不人気で部屋が埋まらない

冬季五輪と3月に開催されるパラリンピックは、興行に加えて、宿泊、寒さ、北朝鮮の行動、競技場の事後活用が課題として挙げられていた。

開幕を4日後に控えた2018年2月5日末時点の入場券の販売率は77.3%で、少しでも関心を高めるため、自治体が観戦する住民にチケットを無料で配布し、教育部も実習として見学する予算を編成している。

通常は1部屋10万ウォン前後のホテルやモーテルの宿泊料が35万ウォンから一時は50万ウォンまで高騰したが、取り締まりを強化した成果から通常価格の1.5倍の10万ウォン台まで下がった。

予想を上回る不人気で部屋が埋まらず、 江原道庁の調査によると五輪期間の2月9日から25日の客室販売率は、雪上競技と開会式や閉会式が開かれる平昌は72%で、氷上競技が行われる江陵は57%、アルペン競技が開かれる旌善(チョソン)は37%にとどまり、平均は閑散期並みの平均65%となっている。

空室はソウルと江陵を結ぶ高速鉄道KTXが五輪期間中は江陵発午前1時まで延長されることが大きい。夕方以降に行われる競技を観たあとからでもソウルに移動できる上、ソウル駅から江陵駅まで片道2万7600ウォンと安価で、ソウル市内に宿泊して通ってもホテルと交通費を合わせて15万ウォンから20万ウォンで収まるのだ。

平昌五輪の最大の課題は寒さ

平昌五輪の最大の課題は寒さだろう。冬季五輪は江原道平昌郡をメイン会場に、江陵市でスケート競技、旌善郡でアルペン競技が行われる。雪はまったくといってよいほど積もっていないが、最低気温は氷点下10度から20度で日中も氷点下だ。

各国の要人が出席する開会式は夜8時の開始で、セキュリティ上、一般観覧者は2時間前までの入場となっており、式典と合わせると氷点下のスタジアムに4時間以上、着座することになる。

安全対策として韓国政府と江原道は、海外からの来場者に対応する五輪統合案内コールセンター(1330)を開設し、英語、日本語、中国語に対応する。宿泊や料理、交通、文化行事などの五輪関連情報に加え、通訳サービスも提供する。

現場には英語、日本語、中国語のいずれかの会話が可能な観光警察官が配備される。10か国語に対応する翻訳機を携行し、取締りや苦情処理のほか、観光案内にも対応する。黒いコートと黒のベレー帽を着用する観光警察官は、黄色いジャケットの警護担当やグレーのジャケットを着用する一般警察官との識別は容易だ。

代表や選手団を送り、韓国と合同チームで参加することになった北朝鮮が期間中に軍事行動を起こすとは考えられない。ノロウィルスの集団感染が発生しているが、五輪観戦は寒さ対策が一番だろう。在韓日本大使館のホームページなどを参照し、安全な観戦を心がけたい。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、予想

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中