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軍拡競争

次の米ロ冷戦の武器は人工知能になる

2018年1月31日(水)16時41分
トム・オコーナー

ロシアのロボット兵士FEDOR(フョードル、「最終実験実証物体研究」の略) Social Media

<AI兵器の開発にとくに熱心なのは、通常兵器でアメリカにかなわないロシア。2丁拳銃と車両を操るロボット兵士も出てきそうだ>

世界の軍隊で、兵器システムに人工知能(AI)を取り入れる動きが加速している。未来を担うこの技術が、まもなく新たな冷戦の標的になると主張する研究者が現れた。

ノースダコタ州立大学のジェレミー・ストラウブ助教は、1月30日付でニュースサイト、ザ・カンバセーションに寄稿し、20世紀の米ソ冷戦で主役の座を占めた核兵器は、米ロの次の軍拡競争ではサイバー兵器やAIに取って代わられると論じた。両大国は、サイバー空間という新たな前線での戦いに多額の資金を投入している。通常兵器の戦力でアメリカにかなわないロシアはとくに、これを格好のチャンスと捉えているようだ。

ストラウブは記事の中で、「冷戦の終結から30年以上が過ぎ、アメリカとロシアは数万発規模の核兵器を退役させた。しかし緊張は高まっている。これからの冷戦には必然的にサイバー攻撃が絡む」と書いている。「そしてそれは、すでに始まっている」

ロボット兵士を開発するロシア

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、AIの利用を最優先事項に掲げる。旧ソ連時代の栄光を取り戻し、できればそれを上回ろうとする野心の一環だ。プーチンは2017年9月、モスクワ北東部のヤロスラブリで児童向けに行った有名なスピーチで、人工知能について「ロシアだけでなく、全人類にとっての未来だ」と述べている。「誰であれ、この分野でリーダーとなった者が世界の支配者になるだろう」

AIの軍事利用に関する研究開発は、すでにさまざまな分野で進んでいる。巡航ミサイルや無人航空機(ドローン)をはるか先にある標的に送り込むには複雑な計測や計算が必要となるが、AIはその計算にも用いられているほか、こうしたミサイルやドローンによる攻撃を検知し、反撃するためのシステムにも使用されている。ロシアでは、装着した兵士に超人的な能力を与える強力な外骨格の作成や、さらには直接的な戦闘に参加するロボット「フョードル」の開発にも、AIが活用されている。この戦闘ロボットは二丁の銃を操り、車両を運転する能力を持ち、さらには宇宙空間にまで活動エリアを広げる可能性があるという。

【参考記事】ロシア初の人型ロボットは2丁拳銃使い

アメリカも、先進的なAI技術を兵器システムに採用してきた。高度な能力を持つ(その一方で不具合も多い)F-35ライトニングII戦闘機はその一例だ。

米ロを中国が猛追していることは言うまでもない。

(翻訳:ガリレオ)

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