最新記事

アメリカ政治

トランプ大型減税が成立しても、2018年は民主党に有利

2017年12月21日(木)18時41分
サム・シュワーツ

公約の大型減税成立は近いと盛り上がるトランプと議会共和党の面々(12月20日) Carlos Barria-REUTERS

<トランプが公約に掲げた大型減税が成立すれば、来年の中間選挙までに支持率も回復するはずと共和党の期待は膨らむが、世論調査は逆の結果を示している>

米共和党は12月20日、上下院で税制改革法案を通過させた。あとはドナルド・トランプ米大統領の署名を待つだけだ。トランプが公約に掲げた重要法案が成立するのは初めだ。これで支持率が改善し、2018年秋の中間選挙で議席減を避けられると期待している。だが世論調査を見ると、その読みは甘いようだ。

CNNの最新の調査では、米民主党は得票率予測で18ポイント共和党をリードしている。現時点で選挙が実施されたら、民主党の候補に投票すると答えた人は56%、共和党候補に入れると答えた人は38%だ。無党派層の有権者にかぎっても、民主党候補に入れる人は51%、共和党候補は35%で、16ポイント差がついている。

しかも、民主党支持で有権者登録をしている人は、共和党支持者に比べ、来秋の中間選挙で投票を行う意欲がはるかに高い。中間選挙での投票に「極めて」または「非常に」熱意を持っていると答えた民主党支持者は48%で、共和党支持者の32%を大きく上回った。

これらの世論調査には、共和党が期待する大型減税による浮揚効果は含まれていない。だが、大型減税効果で共和党の支持率がどのぐらい伸びるかは、ここ数週間、活発に議論されてきた。

金持ち減税で家計は潤うか?

共和党のロビイストで税制改革の推進者であるグローバー・ノークイストは「減税による強固な経済成長」が共和党を有利にすると予測している。「減税で家計に余裕ができ(世論の風向きが変わって)、共和党が上下院で多くの議席を獲得するだろう」

一方、世論調査分析サイト「ファイブサーティーエイト・ドットコム」の創設者ネート・シルバーの見方は異なる。彼は20日のツイートで、「有権者は今までの経験から『減税の恩恵を受けるのは我々庶民ではない』と感じている」「そう簡単に共和党有利には働かない」と書いた。

米メディアでも、中間所得層以下の人々にとっては減税は一時的で、いちばん得をするのはトランプをはじめとする富裕層と企業だとの解説が多い。

CNNの調査結果を見ても、ノークイストよりシルバーの読みのほうが当たっているようだ。共和党の支持率は34%で、不支持率は59%と、現状では有権者の評価はかなり厳しい。一方、民主党は支持と不支持が46%対48%とほぼ同じだ。

さらに共和党にとって痛手となるのは、トランプ政権の統治に対する広範な不信感だ。CNNの調査では、アメリカ人の68%が現政権の統治スタイルに不満があると答えた。ホワイトハウスと議会の上下院を支配している共和党は、現状に対する不満をほかに転嫁できない。中間選挙ではトランプ政権の失点が共和党の得票率にもろに響くことになる。


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中