最新記事

ヨーロッパ

独メルケル首相が陥った政治空白 欧州改革やブレグジットにも影響

2017年11月24日(金)13時02分

11月21日、ドイツのメルケル首相が率いる保守与党と自由民主党、緑の党の連立協議が決裂したことで、独仏主導による欧州改革が大きく前進する望みはかつてないほど薄れてきている。写真はマクロン仏大統領とメルケル首相。ベルリンで5月撮影(2017年 ロイター/Fabrizio Bensch)

つい半年前を見れば、欧州連合(EU)とユーロ圏の統合深化のための改革に向けた独仏首脳の足並みは見事にそろっていた。フランス大統領選に勝利したマクロン氏が欧州の再始動を約束し、首相4選が確実視されていたドイツのメルケル氏がこれに呼応する姿勢を表明していたからだ。

ところが今週、メルケル氏が率いる保守与党と自由民主党、緑の党の連立協議が決裂したことで、独仏主導による欧州改革が大きく前進する望みはかつてないほど薄れてきている。

メルケル氏の選挙プログラム策定に協力したエコノミスト、ジャン・ピサーニ・フェリー氏は「政治的な不透明感がライン川を越えて広がっている。欧州は明確な立場を持つ強力なドイツの政府がいることが当たり前になっていたが、それは当面なくなるかもしれない」と話した。

ドイツが今後しばらく政治空白に見舞われれば、ユーロ圏の統治改革やEUの防衛協力拡大、新たな移民政策の取りまとめなど既に合意への道筋が狭まっている問題は解決がさらに難しくなるだろう。

もしドイツが再選挙実施を余儀なくされた場合、新政権が発足する来年夏まで他の欧州諸国は協議することができない。そのころまでには欧州は、英国のEU離脱交渉で重大局面に突入する一方、長期的なEU予算を巡る議論への準備をしながら、欧州議会選挙への態勢も整えるという状況に置かれる。

ユーロ圏の指導者は12月の特別首脳会議で統合深化の議論を開始する予定で、EUのトゥスク大統領は来年6月までに何らかの結論を導き出すよう提案している。だがそうしたシナリオ通りに事態が進展する公算は乏しく議論は先送りされそうだ、と複数の当局者は話す。

あるユーロ圏の高官は「ドイツに国民の負託を受けていない政府しか存在しない中で、現時点で各国首脳が12月ないし来年6月にどんな動き方ができるのか見当がつかない」と打ち明けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止措置施行、世界初 ユーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中