最新記事

BOOKS

イバンカの実母、トランプ前妻イバナの笑える子育て本

2017年11月7日(火)16時10分
ルース・グラハム

(左から)ドン・ジュニア、イバナ、イバンカ、エリック Ben Hider/GETTY IMAGES

<イバンカたちトランプの3人の子供を立派に育て上げた――前妻イバナが自画自賛本で語るセレブの非常識ライフ>

ドナルド・トランプ米大統領の最初の妻イバナ・トランプが子育て本を執筆中だと明かしたのは今年3月のこと。2番目、3番目の妻を口汚くこき下ろしたり、トランプとの結婚生活にまつわるおいしいエピソードを明かすだろうと、ゴシップ好きは色めき立った。

10月に刊行された新著『トランプ家の子育て(Raising Trump)』は、そんな期待にもちょっとだけ応える内容だ。イバナはトランプの2番目の妻であるマーラ・メイプルズを「ショーガール」呼ばわりし、自身の結婚生活が破綻した経緯も詳しく書いている。

刊行に合わせたインタビューで、イバナは自分がトランプの最初の妻だから「ファーストレディー」と呼ばれる資格があると主張。これには本物のファーストレディー、メラニアもむっとして、イバナの発言は「自己宣伝の騒音」だと切って捨てた。

そもそもイバナの本に「自己宣伝の騒音」以上のものを期待するのが無理な話。「こんなに素晴らしい子供たちを育てたのは私の功績と言っていい」と、イバナは序文で自画自賛している。「子供たちが大学を卒業するたびに、私は元夫に言った。『さあ完成品ができたわよ。後はあなたに任せるわ』と」

トランプの上の3人の子供たち、つまりドン・ジュニアことドナルド・トランプJr.とイバンカ、エリックのような「立派な人」をどう育てたのか、世の母親は知りたがっている――イバナはそう思っているようだが、大きな勘違いだ。甘やかされたセレブの母親が書いた育児本など誰が読む気になるだろう。

とはいえ、この本の一番のサプライズは離婚騒動の知られざる内幕ではない。驚くことにこの本は、ゴシップに興味がない人が読んでも十分楽しめる。

トランプと同じ価値観

最初の数章は、自身の出身国である共産主義時代のチェコスロバキアの現実を生々しく伝えている。タイツを手縫いした話や「コンクリートの箱」のような公営住宅の描写、何をするにも賄賂をせびられ、冬に備えてニンジンを砂に埋めて貯蔵するような困窮生活......。

「常にトップになるしか選択肢はなかった。たった1回のミスで一生浮かばれなくなる。それが紛れもない現実だった」と、イバナは書いている。「家族以外は誰も信用できなかった」

スキー選手になれたおかげで、イバナは鉄のカーテンの向こう側をのぞくチャンスをつかんだ。60年代のウィーンで、彼女は資本主義社会の豊かさに目を奪われ、自分もいつかきっと「ケーキとシャンパンとぴかぴかの新車と毛皮のコート」を手に入れるのだと心に誓った。

その夢がかなったのは周知のとおり。金髪美女のイバナは首都プラハからカナダに移住。ファッションモデルの仕事でニューヨークを訪れ、その晩トランプと出会う。トランプは彼女をスキー旅行に誘い、「僕と結婚しないと人生を棒に振ることになる」とプロポーズしたという。

イバナは共産圏のチェコの貧しさ同様、80年代のニューヨークのバブリーな生活も詳しくつづっている。かつてウィーンで毛皮のコートに魅せられた少女は、ニューヨークの有名な毛皮デザイナー、デニス・バッソのミューズとなり、ミンクのコートを着てマンハッタンでセレブ生活を満喫するようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中