最新記事

BOOKS

イバンカの実母、トランプ前妻イバナの笑える子育て本

2017年11月7日(火)16時10分
ルース・グラハム

magc171107-ivana01.jpg

結婚10年目の87年のトランプとイバナのスナップ Joe Mcnally-Hulton Archive/GETTY IMAGES

トランプにあっさり捨てられたイバナだが、元夫の悪口は書いていない。2人は今も友好関係を保っている。実際、この本を読めば、2人が引かれ合った理由が分かる。基本的な価値観が同じなのだ。

「3人の子供は彼と私の最高の部分を受け継いだ」と、イバナは自慢する。「最高でなければ意味がない。それが私のモットーだ」

本のテーマは子育てだが、イバナは幼いわが子の世話をナニーに任せたことをあっけらかんと認めている。PTAの役員も務めなかったし、子供の発表会やスポーツの試合よりも自分の予定を優先した。

容姿とカネと成功が全て

イバナが子供たちの宿題を手伝った話には笑ってしまう。「歴史はあまり得意じゃない」と、彼女は打ち明けている。「子供たちが何百年も前に起きたことを聞くので、こう言ってやった。『私は今を生きているのよ!』」

トランプの子供たちが異常な環境で育ったことは想像に難くない。トランプはあるときラスベガスで開かれるパーティーにイバンカを連れていくため、学校の教師に電話して試験の期日を変えろと要求したという。

子供たちは両親のエゴに振り回された。別居後間もなく、トランプはイバナと子供たちが暮らすマンションにボディーガードを送り込み、長男のドン・ジュニアを連れてこさせた。そしてイバナに電話し、「ドンは俺が育てる。君の元には帰さない」と言った。イバナはちっとも動じず、「いいわよ。私は後の2人を育てるわ」と返事した。

10分後、ボディーガードが長男を返しに来た。トランプはハッタリをかましただけだったのだ。このとき彼に負けを認めさせたことで自信がついたと、イバナは勝ち誇ったように書く。

離婚後も彼女はトランプ姓を名乗ってきた。容姿とカネと世間的な成功を重視するトランプ家の価値観を守ってきたわけだ。長男が生まれたとき、イバナがドナルド・トランプJr.と名付けたいと言うと、トランプは真顔で言った。「この子が負け犬になったらどうする」

生まれたばかりの息子を見て、そんなことを言う父親がどこにいるだろう。この本は政治には一切触れていないので、読んでいる間はそんな男がアメリカの大統領になった現実を忘れ、ドラマでも見ている気分でセレブ一家の非常識な行状を楽しめる。

そう、アメリカの命運が懸かっていなければ、この一家のいかれぶりは最高の娯楽だ。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

© 2017, Slate

[2017年11月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換

ワールド

イランとイスラエル、再び相互に攻撃 テヘラン空港に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 9
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 10
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中