最新記事

日本外交

対北朝鮮「圧力一辺倒」は日本だけ?

2017年10月10日(火)17時20分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


北朝鮮を誕生させた旧ソ連(ロシア)は格別

このような複雑な様相を呈しながら、ともかく中露は「対話路線」で一致している。

中でもロシアは飛びぬけており、プーチン大統領が「北朝鮮は草を食んでも核・ミサイル開発は放棄しないだろう」と講演で言っている通り、一応国連安保理制裁に賛成票は投じているものの、北朝鮮を見捨てることはない。現に北朝鮮外務省のチェ・ソニ北米局長9月29日モスクワを訪問し、ロシア外務省幹部と朝鮮半島問題に関して意見交換をしている。アメリカへの牽制だ。

ロシアはプーチン演説にもある通り「前提条件なしで北朝鮮との対話に向かうべき」としており、むしろ「米露が対北対話路線を競争している」感さえにじませている。

ティラーソン、直接接触を公表

アメリカは北京を訪れたティラーソン米国務長官が、堂々と「アメリカは平壌と複数の独自チャンネルを持って北朝鮮と直接接触を試みている」旨の発表をした。トランプ大統領はそれをすぐに否定し、「私は、われわれのすばらしい国務長官に『小さなロケットマンと交渉しようとして時間をむだにしている』と伝えた」とツイッターに書き込んだ。するとマティス米国防長官がトランプとティラーソンの間を取り持って「いや、アメリカは接触を試みているだけで、直接交渉はしていない」という苦しい弁明を試みているが、「アメリカが北朝鮮との複数の独自の対話ルートを持っている」ことだけは確かだろう。

韓国は対話路線

韓国の文在寅大統領は北との対話路線を主張して当選した。戦争はもう沢山だというのが韓国国民の本音だろう。しかし朝鮮戦争を休戦させようとしたアメリカのトルーマン大統領に対して、「いや、絶対に休戦したくない。韓国一国だけでも戦い続ける」とダダをこねたのは、他ならぬ韓国の李承晩大統領だったことを忘れてはならない。

だからトルーマンはやむなく、休戦協定を結ぶと同時に韓国と軍事同盟を結ばざるを得なかったのだ。休戦協定では「3ヵ月以内に朝鮮半島から全ての他国の軍隊は撤退する」と誓いながら、米韓軍事同盟では「(米韓どちらかが嫌だと言い始めない限り)米軍は未来永劫に韓国から撤退しない」と誓い、両方の文書に署名した。
この第一責任は韓国にある。

それに応えたアメリカにも、大国としての責任があるが、問題は休戦協定は「国連軍代表としてのアメリカ」が署名したのであり、米韓軍事同盟は「韓国とアメリカの二国間」の協定に過ぎないということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、イラン・イスラエル仲介用意 ウラン保管も=

ワールド

イラン核施設、新たな被害なし IAEA事務局長が報

ビジネス

インド貿易赤字、5月は縮小 輸入が減少

ワールド

イラン、NPT脱退法案を国会で準備中 決定はまだ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中