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習近平三期連投のための「党主席論」と王岐山の去就――新チャイナ・セブン予測(3)

2017年9月25日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

日本でも、国会や内閣に関しては日本国憲法に規定があるが、「自民党の規約」に関して憲法には書いてないのと同じ理屈だ。

結果、もし習近平が二期以上、総書記でいたければ、党主席制度など復活させなくとも、党大会、あるいは選出母体である中共中央に諮れば良いだけである。国家主席の座は憲法の制約により引退したとしても、党の総書記でい続けることは可能だ。

ただその時に「党主席制度」を復活させれば、「国家主席」と「党主席」という、同じ「主席」の名称を持つ職位が二つ存在することになり、昔の「双主席」論議が、又もや持ち上がるだろう。

「双主席」時代に起きた文化大革命という悲劇が再び起きないように、鄧小平は敢えて「中共中央総書記、国家主席、中央軍事員会主席」の三つの座を「一人が担えば争いは起きない」と期待して、江沢民に全てを担わせた。それが腐敗天国を創りあげる源となっている。

中央軍事委員会には、もう一つの「主席」が

「主席」の職位にはもう一つ「中央軍事委員会主席」がある。

今年7月30日、中国人民解放軍建軍90周年記念の軍事パレードが内モンゴルの野戦場で行なわれた。2015年末日に断行された軍事大改革によって、軍の命令系統はすべてが中央軍事委員会の直属に置かれ、習近平・中央軍事委員会主席自身が軍の最高司令官と位置付けられた。それを具現化し印象づけるために、天安門広場ではなく野戦場を選んだ。

したがって、当然のことながら、中央軍事委員会主席と副主席を中心として軍事パレードが行なわれ、形式的なチャイナ・セブン(習近平政権の中共中央政治局常務委員会委員7名)が揃う形を取っていない。

そして兵士は、これまでの「首長」という言葉で習近平に敬意を表する代わりに「主席閣下」という名称で習近平の「皆さん、ご苦労様!」という挨拶に答えた。ここでいう「主席閣下」は「中央軍事委員会主席」のことで、「党主席」ではない。

しかし、これを以て、"毛沢東だけに与えられた「党主席」復活への闘いの烽火(のろし)だ"と分析した記事を見たことがある。おまけに"チャイナ・セブンが出席していないのがその証拠だ"という趣旨のことが書いてあったように思う。

権力闘争で全てを読み解こうとすると、こうした誤読をしてしまうのではないだろうか。

なお、中央軍事委員会主席の任期もまた、党規約には書かれていない。

したがって、現行の党規約のままで、中央軍事委員会主席の座を維持しようと思えばできる。

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