最新記事

ブルカ

ドイツのバイエルン州でもブルカ禁止に その目論見は?

2017年7月20日(木)07時00分
モーゲンスタン陽子

バイエルン州の州都ミュンヘンに本社を置く南ドイツ新聞は、ベールで顔を隠した女性をたくさん見かけるとすれば「夏のマキシミリアン通りだけだ」と揶揄している。マキシミリアン通りはミュンヘンの高級ショッピング街で、おそらく旅行者ということだろう。

2016年の時点でバイエルン州のイスラム教徒は人口のわずか4%とされ、そのほとんどはトルコ人だ。すでに何世代もドイツで暮らしているトルコ人たちはせいぜい髪をスカーフで覆うくらいで、まったく何もつけない女性も多い。

南ドイツ新聞はまた、 顔を隠すことはコミュニケーションの障害になるというCSUのヨアヒム・ヘルマン州内務大臣の意見を肯定し、また顔を隠すことが、とくに女性たちが強制されている場合は賛成できないとしながらも、「禁止」という政治的行為は不必要だとしている。

また、「バイエルンを最も安全な州のように思わせ、CSUを最も強力な党にするために」州政府はこのような不毛な議論も厭わないと分析。一方ツァイトも、「CSUは人権保護に真剣に取り組みながらもそれと相反する行為をする唯一の党だ」と指摘している。

バイエルン州での今回のブルカ禁止はやはり、実際的な影響を狙ってのものではないようだ。ドイツ全土でも、ブルカ着用者は通説で300人と言われている(ただし、この説にはあまり根拠がないことをツァイトが検証している)。結局、禁止によって目に見える大きな変化があるとは考えづらく、象徴的な意味しかないように思われる。また、憲法で宗教の自由が保障されているので、フランスのように禁止が連邦レベルで起こることもなさそうだ。

フランスでは2011年より特定の公共施設でのブルカ着用が禁止されているが、結果は統合どころか、ムスリムに疎外感を与え孤立させてしまっていると、キングス・カレッジ・ロンドンの政治思想学者アラン・コーフィーは語っている

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBが金利据え置き、4会合連続 インフレ見通し一

ワールド

ロシア中銀、欧州の銀行も提訴の構え 凍結資産利用を

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ワールド

IS、豪銃乱射事件「誇りの源」と投稿 犯行声明は出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 8
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 9
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 10
    欧米諸国とは全く様相が異なる、日本・韓国の男女別…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中