最新記事

「イスラム国」の子供たち

「ジハードって楽しそうだ」ISIS崩壊後、洗脳された子供たちは...

2017年7月25日(火)16時25分
エミリー・フェルドマン(ジャーナリスト)

過激思想に基づくカリキュラム

そうした地域で、彼らは学校にISIS独自のカリキュラムを押し付け、甘い餌や宣伝動画で子供たちを誘い、訓練キャンプに送り込んだ。キリスト教徒やクルド民族少数派のヤジディ教徒など異教徒の子らを拉致し、訓練キャンプで洗脳し、戦闘員や自爆テロ実行犯に仕立てて戦場に送り込みもした。

しかし今は、シリアでもイラクでも彼らの拠点は次々と陥落し、洗脳作戦の全貌が明らかになりつつある。

かつてISISの訓練キャンプや学校に通った子供や、彼らの社会復帰に努める教師やセラピストなどへの取材から見えてきたのは、子供たちの置かれた状況の深刻さだ。みんなまともな教育を受けていないし、トラウマを抱えた子も多い。いまだに過激思想を吹聴したり暴力的な振る舞いをして周囲を驚かせる子もいる。

対テロリズム国際センター(オランダ)でテロリストの更生と社会復帰を担当するリースベト・ファンデルヘイデに言わせると、支配下住民の洗脳という点でISISは他のどんな過激派集団よりも厄介だ。洗脳された人が世界中に散らばっているからだ。

支配下に置いた住民の数も、他の組織に比べて圧倒的に多い。「まさに国家のように統治し、住民に教育や医療などのサービスを提供してきた」から、子供たちが彼らのイデオロギーに「感染する」可能性も高かった。

こうしたなか、ファンデルヘイデが暮らすオランダをはじめ、世界中の国々が同じ問題に直面している。過激思想を植え付けられた可能性がある若者が続々と帰国した際に、彼らにどう対処すべきかという問題だ。参考にできる前例はどこにもない。

若い世代の洗脳が最も深刻なのはシリアとイラク、その近隣諸国だ。しかし大量の難民が第三国に流出。一方でISISの外国人戦闘員らが母国へ戻りつつある今、ISISに洗脳された子供たちを見つけ、その社会復帰を助ける仕事は世界中が引き受けねばならない。全ての子供が支援を必要としているが、中には危険人物も交じっているだろう。

【参考記事】モスル奪還作戦、写真で見るISISとの戦いの恐怖
【参考記事】ポストISIS戦略に残る不安

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、台湾に追加投資と人材育成を要求 通商

ビジネス

10月スーパー販売額2.7%増、節約志向強まる=チ

ビジネス

中国、消費促進へ新計画 ペット・アニメなど重点分野

ワールド

米の州司法長官、AI州法の阻止に反対 連邦議会へ書
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中