最新記事

貿易

日欧EPA大枠合意、安倍首相「国内対策指示」 関税下げに企業期待

2017年7月6日(木)21時29分

7月6日、安倍晋三首相(写真中央)は、ブリュッセルで欧州連合(EU)のトゥスク大統領(左)、ユンケル欧州委員長(右)と共同記者会見を開き、経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意に至ったことを正式に表明した(2017年 ロイター/Francois Walschaerts)

安倍晋三首相は6日、ブリュッセルで欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長と共同記者会見を開き、経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意に至ったと正式表明した。

首相は合意を踏まえ、「できる限りの総合的な対策を実施する。国内体制の整備や対策の策定について、石原伸晃担当相に対して指示を出す」と語った。

首相はまた、保護主義的な動きが見られる中で「日欧が自由貿易の旗を高く掲げる意志を示すことができたのは誇るべき成果だ」と強調。世界最大級の先進経済圏の誕生を高く評価した。

消費拡大に追い風

今回の大枠合意を受け、ワインやチーズなどの輸入品にかかる関税引き下げの恩恵を受ける国内流通企業や輸入品の取り扱い企業は、消費拡大に期待感を高めている。

イオン <8267.T>傘下のイオンリテール、岡崎双一社長は「日欧EPAの対象となっているのは、われわれの強化品目。ワインは非常に追い風になる。積極的なセールを仕掛けたい」と述べた。

キリンホールディングス <2503.T>傘下のワイン事業会社、メルシャンの代野照幸社長も「関税が撤廃になることで、日本のワイン市場全体について、広がる可能性があるのは好ましい」と評価する。同時に「日本ワインについては、関税が即時撤廃となったことで中小ワイナリーへの影響は懸念されるが、引き続き畑の拡大や日本ワインならではの繊細で洗練された味わいの高品質なワインを造り、国内外へ情報発信し評価を高めることで、日本ワインの普及を目指していく」と語った。

自動車分野は影響軽微

一方、欧州での自動車販売への影響は軽微との見方が多い。SBI証券・シニアアナリストの遠藤功治氏は「ポジティブではあるが、影響はきわめて限定的だろう」と予測する。

その理由として「すでにEUからゼロ関税を勝ち取っている韓国勢には対抗できるかもしれないが、欧州市場では一般的に、日本車が買われていない理由が価格ではないことが多く、関税分を値下げしたとしても、いきなり日本車の需要が増えるとは思わない」と分析する。

マッコーリー証券(東京)のアナリスト、ジャネット・ルイス氏は、関税が7年かけて撤廃されても、「欧州は成長市場ではないため、日系自動車メーカーが突然『欧州に攻勢をかけたい』ということにはならないとみている。日系自動車メーカーの拡販努力は、中国やインド、ASEAN(東南アジア諸国連合)など成長が期待される市場にとどまるだろう」とコメントした。

(梅川崇、白木真紀、清水律子 取材協力:田実直美)

[ブリュッセル/東京 6日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏やエジプトなどの仲介国、ガザ停戦に関する

ビジネス

米労働市場にリスク、一段の利下げ正当化=フィラデル

ワールド

トランプ氏、ゼレンスキー氏と17日会談 トマホーク

ワールド

トランプ氏、ガザ停戦でエジプトの役割を称賛 和平実
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇敢な行動」の一部始終...「ヒーロー」とネット称賛
  • 4
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 4
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中