最新記事

映画

この夏も『パイレーツ・オブ・カリビアン』が大暴れ

2017年6月30日(金)10時15分
エイミー・ウエスト

magc170629-pirates02.jpg

ヘンリーたちの冒険に巻き込まれるカリーナは聡明で気の強い天文学者 ©2017 DISNEY ENTERPRISES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

しかし、本作の最大の弱点は主演のデップだ。これまでの作品で見せたシャープさは影を潜め、自分自身のパロディーに成り下がってしまった。わざとらしく悲鳴を上げ、泥酔し、運だけでピンチを切り抜けるシーンがとにかく多い。これでは頭は切れるがどこかトボけたミステリアスな海賊というよりも、『アリス・イン・ワンダーランド』のマッドハッターが海賊のコスプレをした感じだ。

幸い、今回もラッシュがキャプテン・バルボッサ役で登場。03年の1作目以降は地味な扱いだったが、今回は出演シーンが大幅に増え、一番の見せ場にも絡む。百戦錬磨のバルボッサは相変わらず狡猾な策士だ。海の覇権を守ろうとサラザールと怪しげな契約を結んだりもするが、優しい一面も見せる。

【参考記事】再び『ツイン・ピークス』の迷宮へ

新たなヒロインに注目

3作目の『ワールド・エンド』で恋に落ち、結婚したウィル(オーランド・ブルーム)とエリザベス(キーラ・ナイトレイ)が、10年ぶりに登場するのもうれしい。

彼らの息子ヘンリー(ブレントン・スウェイツ)と行動を共にする天文学者カリーナ役のカヤ・スコデラリオも光る。男だらけのキャストの中で一歩も引かず、鼻っ柱が強く皮肉屋の女性を魅力的に演じた。

スタッフもいい仕事をしている。作曲家のジェフ・ザネリはハンス・ジマーによるおなじみのテーマを生かしつつ、趣のある音楽を作り出した。撮影監督のポール・キャメロンはファンタジー色の強い場面で才能を遺憾なく発揮。お化けのサメがスローモーションで宙を飛ぶシーンには、思わず見とれてしまう。

つまり『最後の海賊』はどこを取っても合格点。要素を盛り込み過ぎた前2作と違って、シンプルな復讐劇にまとめたのも賢明だった。

銀行強盗やスパロウが危機一髪で処刑を逃れる場面など、印象的なアクションシーンも盛り沢山。第1作の大人っぽい味わいにこだわるファンには物足りないかもしれないが、最後まで楽しめるのは確実だ。

[2017年7月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サウジ6月原油販売価格、大半の地域で上昇 アジア5

ワールド

インドネシアGDP、第1四半期は予想上回る 見通し

ビジネス

バークシャー株主総会、気候変動・中国巡る提案など否

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中