最新記事

日本社会

虐待児童を受け入れる一時保護所 ケアより規律でトラウマ生む例も

2017年6月26日(月)16時31分

6月22日、日本では、虐待や非行、発達障害などの問題を抱え、親元から離れた緊急避難シェルターを必要とする子どもたちが年間2万人以上、「一時保護所」と呼ばれる児童相談所の付属施設に身を寄せている。虐待被害者として一時保護所に3カ月預けられた9歳の女児。3月17日、都内で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

日本では、虐待や非行、発達障害などの問題を抱え、親元から離れた緊急避難シェルターを必要とする子どもたちが年間2万人以上、「一時保護所」と呼ばれる児童相談所の付属施設に身を寄せている。

だが、多くのこうした施設内部では、過度に厳格な管理体制が敷かれており、保護児童に苦痛に満ちた経験を与えていることが、一時保護所で勤務、もしくは保護されたことのある経験者や、この制度に詳しい専門家ら十数人とのインタビューで明らかになった。

こうした懸念を受け、政府内からは環境改善が必要だとの声が上がっているものの、その実現のめどは示されていない。厚生労働省では児童福祉制度を改善するための専門委員会が設置され、一時保護所の改革も議題となっている。

「一時保護所は今のままでいい、何も変える必要はないと言う人はいない」と厚生労働省・児童家庭局の浜田裕氏は語る。「一時保護所がどういう仕組みであるべきかは、まさに今後議論していく。今まで、明確には議論されてこなかった」

一時保護所は元々、第2次世界大戦後に戦争孤児や放浪児に食事や寝る場所を提供するために設立された。だが、全国に136カ所あるこの緊急シェルターは、過去70年のあいだ、ほとんど進化していない、と専門家は指摘する。

ここで保護される乳幼児から17歳までの子どもたちは、自ら脱走したり、虐待する親によって奪い返されないよう、室内に止め置かれ、学校に行かせてもらえないことがほとんどだという。

多くの保護所で、十分な研修を受けていない職員が、子どもたちに厳しい規則やスケジュールを課している。携帯電話や自宅から持ってきたおもちゃは禁止され、規則に従わないと、罰として個室に隔離されることもある。より厳しい保護所では、食事中のおしゃべりや、他の子どもと目を合わせることさえ許されていない、と状況を良く知る関係者は言う。

施設の古さや大きさ、設備は、それぞれ大きく異なる。体育館や庭があり、DVDや漫画が充実している施設もあれば、老朽化して壁紙もはがれ、畳は古く、1部屋に10人が寝るところもあるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ペロシ元下院議長の夫襲撃、被告に禁錮30年

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅安、FRBは利下げ時期巡り慎

ワールド

バイデン氏のガザ危機対応、民主党有権者の約半数が「

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中