最新記事

シェアリング

中国の自転車シェアリング大手、世界へ拡大 7月には日本にも

2017年6月23日(金)20時30分
松丸さとみ

フォーブスによると、中国での自転車シェアリングはMobikeとOfoがほぼ二分しており、両社ともに市場価値は10億ドル(約1110億円)以上。30分をわずか0.5元(約8円)ほどで貸し出しているが、広州の自転車シェアリングの市場規模は今年103億元(1,680億円)に達すると予測されており、2019年には237億元(約3,860億円)に成長するとみられている。同記事は、Mobikeに投資する1社チーミン・ベンチャー・パートナーズ(啓明創投)の投資家の話として、「これほど爆発的に成長する企業は他になかなか見つからない」との談話を紹介している。

Ofoもヨーロッパへの進出を予定しており、これに先駆け4月にはケンブリッジで試験的に運営を開始している。

フィナンシャル・タイムズは3月の記事で、世界の都市における自転車シェアリングの規模を比較した図を掲載していた。上海が45万台で最大となり、次いで北京、深圳、広州(10万台で同率2位)、ロンドン3位(1.36万台)、ニューヨーク4位(1万台)と続く(ただし、上海は全運営会社の自転車数合計で、他都市は主要1社の自転車数)。

溢れる自転車に規制の動き

自分の自転車であれば、乗っていったら必ず乗って帰ってこなくてはならないが、自転車シェアリングなら、行きは自転車で、帰りは疲れたから電車、という使い方ができて便利だ。しかしガーディアンが3月に掲載した記事は、特に広州を例に挙げ、地下鉄駅前やショッピングモール近くの路地が放置自転車で溢れるといった問題が起こっていると指摘している。放置された自転車の中には、サドルがなくなっていたり、鍵が壊れていたり、QRコードが削り取られていたりと、使えなくなってしまった自転車も少なくないようだ。

また、人民日報の国際版『環球時報』は3月、「自転車はもうたくさん」という見出しで、路上に溢れる自転車に嫌気が差した上海市交通委員会が、MobikeやOfoを含む自転車シェアリングの運営会社6社にこれ以上自転車を路上に出すなと勧告したと伝えていた。自転車シェアリング産業に自治体レベルで何らかの規制を設ける動きは、中国全土に広がっている

中国の自転車シェアリング企業が海外に目を向け始めたのは、このような背景もあるのかもしれない。上記の都市別シェア自転車台数ランキングには日本の都市が全く入っていないのだが、都内6区で自転車シェアリングを運営しているドコモが2016年4月に発表した時点では、都内6区での自転車台数はわずか1760台だった。つまり、海外での成長に視線を注ぐ中国企業にとって、日本は未開拓の市場と映るかもしれず、Mobikeに続いて他社が参入してくる可能性もある。

国土交通省の資料によると、日本では87都市でコミュニティサイクルが導入されている。都内では、2020年の東京オリンピックに向け自転車レーンの整備も進んでおり、海外からの参入も追い風に、自転車シェアリングが活用される場面も増えていきそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米株から日欧株にシフト、米国債からも資金流出=Bo

ビジネス

ユーロ圏製造業PMI、4月改定49.0 32カ月ぶ

ビジネス

仏製造業PMI、4月改定値は48.7 23年1月以

ビジネス

発送停止や値上げ、中国小口輸入免税撤廃で対応に追わ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中