最新記事

フィリピン

ドゥテルテ比大統領就任1年で最大の試練、 ISとの戦闘に健康不安説も

2017年6月29日(木)17時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

中国の緊急武器支援で受け取った狙撃銃を覗くドゥテルテ(6月28日) Romeo Ranoco-REUTERS

<1週間「行方不明」だったドゥテルテ大統領は公の場に復帰したが、ミンダナオの武装勢力との戦いに終わりは見えない>

フィリピンのドゥテルテ大統領6月30日で大統領就任1年を迎えるが、南部ミンダナオ島で続く武装テロ組織「イスラム国(ISIS)」系武装勢力との戦闘が5月23日の戒厳令施行から約1カ月にも関わらず膠着状態に陥っており、政権として最大の試練に直面している。

そんな中6月になってから約1週間も公の場に姿を見せないなど、就任直後から精力的に行動してきたドゥテルテ大統領に健康不安説も持ち上がった。かつてオバマ米大統領に対し「地獄に落ちろ」と罵るなど代名詞にもなっていた暴言も最近は極めて控え目で「ドゥテルテ大統領らしくなくなった」との声が出る一方、「ようやく大統領としての自認と自覚がでてきた」との見方も。

就任1年を前にしたドゥテルテ大統領の最近を分析してみる。

独立記念日式典欠席で憶測

6月12日のフィリピン独立記念日の記念式典がマニラのリサール公園で行われたが、この国家的重要行事にドゥテルテ大統領は欠席した。南部ミンダナオ島南ラナオ州マラウィで続く武装勢力との戦闘に携わる国軍との連絡調整、部隊兵士の激励などでドゥテルテ大統領はマニラの大統領宮殿を留守にすることが多いことから「治安問題を優先した結果」と欠席の理由は説明された。

【参考記事】フィリピンが東南アジアにおけるISISの拠点になる?

しかしその後も公の席で姿が確認されず動静がぱったりと絶えた。連日内外のマスコミをにぎわせていたドゥテルテ大統領に関するニュースが消えたためマスコミを中心に大統領の健康不安説が流れはじめ、入院説、重体説、一部で死亡説まで流れる事態となった。

昨年の大統領選挙期間中に片頭痛で予定をキャンセルしたことやガン説、あるいは昔のバイク事故で患った脊髄損傷の悪化などあらゆる健康に関する不安情報がフィリピン全土に流れ、国民の関心は一気に高まった。

大統領府や政府関係者は「職務が多忙なだけで(大統領の)健康に問題はない」と不安説の払拭に懸命だったが、大統領本人が姿を見せないことで懸念を増大させた。

しかし6月17日にミンダナオ島での記念式典に突然姿を現し健康不安説を一掃した。健康状態を直接訪ねた報道陣に対しドゥテルテ大統領は「見ての通りだ」としたうえで最後に健康診断を受けたのは昨年で、「大統領が不在でも副大統領がいるのに何が問題なんだ」と報道陣に問い返す始末。果ては「この期間中に手術とか献血は受けたのか、何をしていたのか」との質問に「割礼を受けていた」と得意のドゥテルテ節で応える余裕も見せたが、散々マスコミを騒がせた得意の毒舌はどこへやら、どこか大人しかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中