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イタリア

苦境のアリタリア航空 救済か破たんかに揺れるイタリア

2017年5月7日(日)12時07分

イタリア政府は同社に対して短期的な延命策を与えている。最大4億ユーロのつなぎ融資を与えて倒産プロセスを進め、そのなかで継続事業体として売却できるか清算するかを管財人が判断するというものだ。

だが政府は、アリタリア再国有化の可能性を否定している。かつては戦後イタリアの経済成長を象徴する国有企業だったアリタリアだが、現在は国内路線におけるライアンエアやイージージェットなどの格安航空会社との競争に苦戦している。

同国のパドアン経済・財務相はさらに一歩踏み込んで、直接・間接を含め、アリタリアへの出資に政府は消極的だと発言した。

しかし、2018年5月までに総選挙を迎える同国の民主党政権が傍観者に徹し、アリタリアの破綻と1万2500人の失業を放置すると考えるイタリア人はほとんどいない。

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権力への返り咲きを狙うレンツィ前首相は、今週末の民主党予備選で新たな党首に選出されることを見越して、5月半ばまでにアリタリアに対する救済計画を示すと述べた。

だが、アリタリアに対する世論の反発を受けて、政治的な計算が難しくなっている。レンツィ氏も、民主党の主な対抗勢力である「五つ星運動」も、アリタリアについて具体的な提案を示すまでには至っていない。

反既成政治政党「五つ星運動」の指導者たちは、アリタリアへの公的資金投入に前向きかどうかについて、コメントを拒否している。

「今回、この問題に関する世論が大きく割れたことで、状況がややこしくなっている」と語るのは、「The endless privatisation of Alitalia(アリタリアの終わらない民営化)」の著者で、ビコッカ大学(ミラノ)で交通論を研究するアンドレア・ジュリチン氏だ。

「五つ星運動などの政党やレンツィ氏をはじめとする政治家が、この問題について態度を鮮明にしていないのは、そのためだ」と指摘する。

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