最新記事

アメリカ政治

トランプ大統領のインフラ計画 「準備完了」でも未着工の理由

2017年5月2日(火)20時05分

4月23日、トランプ大統領が約束した1兆ドル規模のインフラ整備計画を成功させるのは、口で言うほどたやすいことではない。写真はカリフォルニア州で建設が進む海水淡水化プロジェクトの建設現場。2014年1月撮影(2017年 ロイター/Mike Blake)

トランプ大統領は先月末、ホワイトハウスのルーズベルト・ルームに集まった製造業者たちを前に、大規模なインフラ整備計画がまもなくスタートすると確約した。

大統領は今年には「実現させる」と語ったと、この会合に出席したマーリン・スティール(ボルチモア州)のドリュー・グリーンブラット社長は述べた。「非公開会合で、大統領が最初に言ったのは、実はこのことだった」と同氏は語った。

だが、1兆ドル(約111兆円)規模のインフラ整備計画を成功させるのは、口で言うほどたやすいことではない。政権に提案されているいくつかのプロジェクトがそれを裏付けている。

北米建設労働組合連合と政権移行を支援した外部のデベロッパーが提出したプロジェクトのリストには、いずれもインフラ建設企業が着工「準備完了」と称する複数のプロジェクトが含まれている。

だが「準備完了」とは言っても、さまざまな理由により、必ずしも実際にプロジェクトが開始できるとは限らない。したがって、プロジェクトの開始を急ぎ、雇用を生み出し、経済に刺激を与えようといくら努力しても、トランプ大統領の約束する10カ年・1兆ドル規模のインフラ整備プロジェクトは遅々として進まない可能性がある。

北米建設労働組合(NABTU)は、1月23日にショーン・マクガービー会長がトランプ大統領に面会した後、同組合は橋梁、パイプライン、水道など計26件のプロジェクトのリストを提出。政権移行を支援したオハイオ州のデベロッパー、ダン・スレイン氏がまとめたもう1つのリストには、内陸水路や港湾からFBIの新本部に至るまで、あらゆる分野のプロジェクト51件が含まれている。

トランプ氏自身の計画は内容に乏しいが、政権幹部は、長時間を要する許認可プロセスを短縮する方法を模索していると話している。

大統領自身の計画は詳細に欠けるが、米政権幹部は、長時間を要する許認可プロセスを短縮する方法を模索していると話している。

「現行のシステムでは先が見えない」と同幹部は語る。

スレイン氏、NABTUのがともに支持しており、双方のリストに掲載されているプロジェクトは9件ある。そのうち7件はまだ着工されておらず、1件は予備的な工事が始まったにすぎない。インフラ整備プロジェクトをトランプ氏が望むようなスピード感で着手することの難しさを物語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 7
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中