最新記事

自動車

「空飛ぶ自動車」いよいよ発売、課題は大衆化

2017年4月27日(木)21時00分
アンソニー・カスバートソン

リリウムとエアロモービルが決定的に違うのは、離着陸の方法だ。エアロモービルは折りたたみ式の翼を採用しており、離陸には一般的な滑走路が必要なため、どこに行くにも空港を使用することになる。利用は行きも帰りも空港がある場所に限られてしまうのだ。

一方のリリウムは、垂直離着陸(VTOL)システムを採用し、ヘリコプターのようにどこでも離着陸が可能だ。

「VTOLの方が実用性はある。基本的にどこでも着陸できるから」とリリウムの広報担当者は本誌に語った。「我々の目的は、滑走路がない都市部の人々に向けたサービスを提供することだ」

webt170427-02.jpg
1927年にヘンリー・フォードが設計した「空飛ぶT型フォード」 Creative Commons

エアロモービルが滑走路を使うようにしたのは、都市部でVTOLを普及させる場合に直面する、航空規制というハードルに配慮した判断だという。ドローン規制でさえ、当局はさんざん頭を悩ませているのだから。

空飛ぶ車を手がけるのはスタートアップ企業だけではない。欧州航空機大手エアバスも個人向けの空飛ぶ車を開発中だし、今週はグーグルのラリー・ペイジが出資する米スタートアップ企業キティホークも試作車「フライヤー」を発表した。

最終的にこれらの車は、ウーバーが提案するような空飛ぶタクシーのネットワークに組み込まれる可能性がある。ウーバーのジェフ・ホールデン最高製品責任者(CPO)は、VTOLを利用した短距離輸送ネットワーク「ウーバー・エレベート」を活用して、2023年までに乗客を自動運転ドローンのタクシーで移動させる未来を思い描く。

ウーバーは昨年、この構想をまとめた99ページの白書を発表し、今週米テキサス州ダラスで開催した「ウーバー・エレベート・サミット」でその内容をさらに膨らませた。エアロモービルも空飛ぶ車でウーバーと提携を目指すスタートアップの1つだ。

webt170427-03.jpg
空飛ぶタクシーのネットワーク作りを目指すウーバー Uber

「ウーバーの計画を注意深く見守っている」とエアモービルのバドツは言った。「我々はウーバーのチームと連絡を取り合い、エレベートのネットワークで自社の車を走らせるよう交渉中だ。だがこの仕組みが実現するのは12~15年後になるかもしれない」

今年はライト兄弟の最大のライバルだったグレン・カーチスが、世界初の空飛ぶ車を発明してちょうど100年という記念の年だ。カーチスは飛行に成功しなかったが、あれから1世紀で空の旅は商業化され、人類初の月面着陸も成功、インターネットも発明された。空飛ぶ自動車がどんなにSFチックでも、希望を持つ根拠は十分だ。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
毎日配信のHTMLメールとしてリニューアルしました。
リニューアル記念として、メルマガ限定のオリジナル記事を毎日平日アップ(~5/19)
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏首相、年金改革を27年まで停止 不信任案回避へ左

ビジネス

米ウェルズ・ファーゴ、中期目標引き上げ 7─9月期

ビジネス

FRB、年内あと2回の利下げの見通し=ボウマン副議

ビジネス

JPモルガン、四半期利益が予想上回る 金利収入見通
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中