最新記事

THAAD

中国人クルーズ客、愛国心理由に韓国・済州島での下船拒否

2017年3月16日(木)11時19分

3月14日、韓国の輸出品は中国で広く人気を得ている一方、中国共産党によって巧妙にかき立てられた愛国心が、外交的なもめ事に直ちに加勢し得ることを、韓国済州島での中国人の下船ボイコットは示している。写真はクルーズ客船コスタ・セレーナ号。上海で撮影(2017年 ロイター/Aly Song)

クルーズ客船コスタ・セレーナ号が韓国の観光地、済州島に到着したとき、バイ・リユンさんは船内にとどまった。船内では、クルーがマジックショーやゲーム、ワインテイスティングを開催していた。

船内に残ったのは彼女だけではない。

3000人以上乗船していたとみられる中国人のほとんどが、物議を醸している米ミサイル防衛システムの韓国配備に対する中国政府の激しい反発に連帯を示すため、コスタ・セレーナ号から降りなかった。

「私たちは一日中ずっと、クルーズ船で過ごした。とてもハッピーだった」と、中国西部の甘粛省から来たバイさんは14日、帰路につく途中で下船した上海でこう語った。

「この特別な時期、中国人として私たちは政府の呼びかけに必ず応じるべきだ。つまり、済州島に行かないことだ」

その決断によって、韓国メディアの報道によると、済州島の港ではツアーガイドたちと約80台の観光バスが待ちぼうけを食らった。

中国は、米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の強力なレーダーが自国の安全保障にとって脅威だとして、同システムが韓国に配備されることに公然と異を唱えている。

一方、韓国と米国は同システム配備について、北朝鮮によるミサイル攻撃の高まる脅威から韓国を守るために導入されると主張している。

それにもかかわらず、中国政府は、報復として韓国企業を狙い撃ちしていると明言してはいないものの、韓国と取引する企業や韓国で活動する企業に対する圧力を強めている。

韓国への影響は大きく、とりわけ観光業は打撃を受けやすいセクターだ。韓国のデータによると、同国を訪れる観光客の約半数は中国人である。

中国東方航空<600115.SS>や春秋航空<601021.SS>のような航空会社は先週、中国東部の浙江省寧波市と済州島間のフライトをウェブサイトで提供するのを停止した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ガザ支援船団、イスラエル封鎖海域付近で船籍不明船が

ビジネス

ECB、資本バッファー削減提案へ 小規模行向け規制

ビジネス

アングル:自民総裁選、調和重視でも日本株動意の可能

ワールド

ザポリージャ原発、外部電源喪失1週間超 非常電源で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 5
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 6
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 7
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が…
  • 10
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中