最新記事

軍事

日米韓ミサイル防衛演習で北朝鮮、中国を牽制

2017年3月15日(水)19時00分
エミリー・タムキン

韓国・浦項の米韓合同演習で、上陸作戦の訓練を行う韓国海軍部隊(2014年2月) Kim Hong-Ji-REUTERS

<北朝鮮のミサイル発射で緊張が高まる東アジアで日米韓が合同演習。日本は今までより大きな役割を果たす。南シナ海にも、海上自衛隊が最大級の護衛艦「いずも」を派遣>

日本とアメリカ、韓国の3カ国は14日から2日間の予定で日韓両国の近海で弾道ミサイル防衛の合同訓練を開始した。15日からはレックス・ティラーソン米国務長官が就任後初のアジア外遊を行う。

弾道ミサイル防衛システムを搭載した3隻のイージス艦が参加する合同演習は、6日に北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射したのを受けたもの。先週は、米軍が配備を進めるTHAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)の一部装備も韓国に搬入された。

【参考記事】韓国へTHAAD発射台が到着 中国の反発必至

THAADの搬入と合同演習に中国と北朝鮮は激しく反発し、非難する声明を発表した。その最中に日本と韓国、中国を訪れることになったティラーソンには、いっそう大きな注目が集まっている。

日本もより大きな役割を担う

中国外務省の報道官は14日、北朝鮮と日米韓の双方を批判した。「北朝鮮は過去の国連安保理決議に違反して核開発を進めると主張し、アメリカと韓国と日本は大規模な軍事演習を実施している」

「(合同演習は)悪循環で地域の緊張状態を高める。どの国も得をしない」

【参考記事】一隻の米イージス艦の出現で進退極まった中国

北朝鮮も国営通信を通じて非難声明を発表し、主権が侵害されれば「容赦なく、超高精度の攻撃」を仕掛けると威嚇した。

今回の合同演習は、3カ国のイージス艦が共同でミサイルを探知して迎撃能力を強化するという戦術的な協力の側面だけでなく、ともにアメリカの同盟国でありながら日頃は仲が悪い日韓両国が歩み寄る姿を内外に示す狙いもある。

日本の海上自衛隊が、同海域でより大きな役割を果たしていくうえでもこの合同演習は不可欠だ。

日本政府は、海自最大級の護衛艦「いずも」を5月から3カ月間、周辺国が領有権を争う南シナ海とインド洋に派遣する。7月にインド洋でアメリカとインドが実施する共同訓練に参加するまで、約2カ月間は南シナ海に留まるという。日本は南シナ海に対する領有権を主張していないが、航行の自由は守りたい立場を示してきた(恐らく日中両国が領有権を争う島がある東シナ海をめぐり、中国を牽制する狙いもあるだろう)。

【参考記事】中国を牽制したい米国の切り札は「 同盟国」のインド

中国外務省は、日本の艦船による「通常の航行」は問題ないとしつつ、釘を刺した。「もし別の意図で南シナ海を航行するのなら話は別だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10

ワールド

米関税15%の履行を担保、さらなる引き下げ交渉も=

ワールド

林氏が政策公表、物価上昇緩やかにし1%程度の実質賃

ビジネス

午後3時のドルは147円前半へ上昇、米FOMC後の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中