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アメリカ経済

トランプに雇用創出を約束した孫正義の、最初の「買い物」は?

2017年3月1日(水)11時00分
ダニエル・グロス

恩恵は一握りの富裕層に

ここ数年の強気市場で、フォートレスも新たな資金を集めることには成功し、それなりの実績は上げてきた。だが相場の変動幅が小さく、市場に大量の資金が流入する今の環境でヘッジファンドは苦戦し、株価指数に連動するインデックスファンドを上回る収益も稼げない。

フォートレスは債券、不動産など投資対象を多角化したが、この戦略では期待したほどのリターンを生めなかった。

では、なぜ孫はフォートレスに食指を動かしたのか。トランプとの約束を果たすための「手付金」の意味もあるだろうが、もっと周到な計画がありそうだ。

【参考記事】大荒れトランプ政権、経済政策の命運を握る2人のキーパーソン

孫は目下、1000億ドル規模のファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の設立を準備している。サウジアラビアから巨額の出資を受け、テクノロジー分野に投資する計画だ。

フォートレスの現在の運用資産は約700億ドル。加えて孫が目を付けたのは、同社が持つノウハウと人材をビジョン・ファンドに活用できる利点だろう。

これはシリコンバレーの企業がよく使う手だ。零細な新興企業を法外な価格で買収し、優れた技術と人材を手に入れる。ソフトバンクは百戦錬磨のファンドマネジャー集団を手に入れたというわけだ。

ただし、この取引ではアメリカのブルーカラーは救われない。大きな恩恵を受けるのは一握りの富裕層のみ。トランプの雇用創出に期待する向きは、早く夢から覚めたほうがいい。

[2017年2月28日号掲載]

© 2017, Slate

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