最新記事

プロダクツ

チーズ×牛革で100%スイスメイド ワンオフ腕時計のこだわりとは?

2017年3月3日(金)17時24分
笠木恵司 ※Pen Onlineより転載

地紋が浮かんだブラウンがかったミルク色のケースがチーズ製。厳密にはハイテク複合素材のITR²の中にチーズを配合。その比率は約50%という。ベルトも黒と白の斑な毛肌がリアルな本物の牛革。

「時計のケースがね、チーズでできているらしい」
「まさか。だったら飢えた時には食べられるわけ?」

2017年1月16日から20日までスイス・ジュネーブで国際時計展示会「SIHH」が開催されましたが、あちこちでこんな会話が交わされたのではないでしょうか。近年は時計のケース素材が多様化しており、セラミックはもちろん鍛造カーボンといった先端素材もめずらしくありませんが、食品のチーズとはまさに前代未聞。紛れもなく世界初でしょう。これを開発したH.モーザーのブースで実物を紹介されるまで、頭の中で「?」がいくつも浮かびました。

(参考記事:伝説の系譜を受け継ぐ、独創的ダイバーズが誕生。

このチーズ・メイドの時計、その名も「スイス マッドウォッチ」は、冗談やシャレではないアイロニカルな社会性を秘めています。それは後述するとして、概略を先に紹介すると、カーボンナノチューブのケース製造にも使用されるハイテク複合素材ITR2にチーズを約50%配合。このため、ケースはブラウンがかったミルク色で、地紋も浮かんでいます。使われているチーズは、スイスとフランスの国境沿いに位置するジュラ山脈周辺の高地でつくられる伝統的なヴァシュラン・モン・ドール(Vacherin Mont d'Or)。コンクールで金賞を授与された銘品だそうです。これだけで時計のケースを造形しているわけではないので、もちろん堅くて食べられません。ただし、ストラップも白と黒のぶち(斑)模様と毛肌が印象的な牛革製。美味しそうに感じられる組み合わせではあります。

(参考記事:「エルメスの手しごと」展で、職人たちの"手のインテリジェンス"を目撃してください!

ダイヤルはスイスの国旗をイメージして、深紅をベースに純白の針とバーインデックス。特に深紅のベースカラーは、独特のグラデーションが美しく鮮やか。これはH.モーザーのアイコンともいえる「フュメダイヤル」で、大変に手間のかかる技法が施されています。ムーブメントは手巻きで、約3日間のロングパワーリザーブ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米国の光ファイバーの一部に関税 最大78.2

ビジネス

トランプ氏の息子2人、アメリカン・ビットコイン株上

ワールド

トランプ氏、ロシア・ウクライナ和平実現へコミット=

ワールド

米西海岸3州、ワクチンの統一的な推奨で連携
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中