最新記事

保護主義

「国境税」の脅威、トヨタら企業はロビー活動で阻止へ

2017年2月3日(金)08時27分


ベビー用品、ビールにも影響

こうしたロビー活動を行っているのはトヨタなど自動車メーカーだけではない。

米ディスカウントストア大手ターゲットのブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)はワシントンに出張して下院歳入委員会のメンバーと面会した。

関係筋によれば、コーネルCEOは議員たちに、国境税が実現すれば、米国に輸入されている海外製ベビー用品などの生活必需品を消費者が購入することが難しくなると語った。ターゲットの広報担当者ダスティ・ジェンキンス氏も、この訪問が行われたことを認めている。

ミネアポリスを本拠とするターゲットのやや南に本社を置くのが、米家電小売最大手のベストバイだ。同社は、「20%の国境税が課されれば、ベストバイの年間予想純利益10億ドルは消えてなくなり、逆に20億ドルの損失になる」というアナリストの予測を紹介するパンフレットを議員たちに配布している。

ロイターが閲覧したこのパンフレットによれば、中国のアリババなどのインターネット通販事業者は、オンラインで販売して、米国の消費者に商品を直接発送することで国境税を回避し、「米国ビジネスを損なう」と主張している。

ベストバイの広報担当者ジェフ・シェルマン氏は、社員が連邦議事堂で議員やそのスタッフにこのパンフレットを配布していたことを認めている。

メキシコ国内で「コロナ」「モデロ」といったビールを醸造している米アルコール飲料大手コンステレーション・ブランズは、メキシコ製ビールなどの製品は「本来はメキシコ製品である」という理由で国境税の対象から外すよう連邦議員に働きかけている。同社のロブ・サンズCEOが投資家向け業績報告のなかで明らかにした。

サンズCEOによれば、この取り組みが失敗した場合、コンステレーションはメキシコ産よりも米国産の原材料を多く調達していくことになるという。

米国第2位の非公開企業である複合企業コーク・インダストリーズは、ある声明のなかで、国境税は消費者にとって「破滅的な」影響を及ぼすだろうと述べている。

共和党への献金者であるチャールズとデイヴィッドのコーク兄弟が保有する同社は、石油精製事業・製造事業を抱えている。

富豪のコーク兄弟が設立した有力な保守系政治団体「アメリカンズ・フォー・プロスペリティ(AFP)」のティム・フィリップス理事長は、ロイターの取材に対し、同団体に所属している運動員たちが国境税に反対するロビー活動を開始できるよう、すでに啓発活動を開始したと話している。AFPによれば、同団体には200万人の運動員がいるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:大火災後でも立法会選挙を強行する香港政府

ビジネス

リオ・ティント、コスト削減・生産性向上計画の概要を

ワールド

中国、東アジアの海域に多数の艦船集結 海上戦力を誇

ワールド

ロシアの凍結資産、EUが押収なら開戦事由に相当も=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中