最新記事

ブレグジット

イギリス最高裁、EU離脱には議会承認必要と判断 政府近く法案提出

2017年1月25日(水)01時43分

 1月24日、英最高裁判所(写真)は、EU離脱手続きの開始には議会の承認が必要との判断を下した(2017年 ロイター/Toby Melville)

 英最高裁判所は24日、欧州連合(EU)離脱手続きの開始には議会の承認が必要との判断を下した。古くから行政府の権限として継承されてきた「国王大権」を用いて首相がリスボン条約第50条を発動することが可能だという政府の主張を退けた。

 最高裁では8対3で政府案を却下した。ただ、英国を構成する北アイルランド、スコットランドならびにウエールズから第50条発動前に同意を得る必要はないとした。

 最高裁のニューバーガー長官は「国民投票は政治的に非常に重要だが、議会法にはその結果を受けてどうすべきかは規定されていない」と指摘。「したがって、国民投票に効力を与えるための法律の変更はいかなるものでも、英国憲法すなわち議会法が承認した方法に則るべきだ」との判断を示した。

 デービスEU離脱担当相は議会に対し「第50条を発動する上で、法的権限を政府に与えるための法案を数日中に提出する」とした上で「国民の決定を実行に移し、最高裁の判断を尊重するため、法案は最大限簡素化される見通し」と語った。

 メイ首相はこれまで、3月末までに第50条を発動すると主張してきたが、今回の最高裁判断を受けて議会の承認を得ることが必要になる。議会では、主要野党・労働党がEU離脱そのものには反対せず、法案の修正を求める構えをみせている。

 コービン党首は「単一市場への完全かつ無関税でのアクセス、労働者の権利維持、社会的・環境的保護という原則が法案に盛り込まれるよう努力する」と述べた。

 報道によると、下院(定数650)では最大80人の労働党議員が第50条発動に反対票を投じる見通し。自由民主党も、離脱に関する最終条件が2度目の国民投票にかけられない限り、離脱に反対すると示唆した。54議席のスコットランド民族党は法案の修正を求める方針。

 ただ、離脱反対派は首相の離脱工程を遅らせたり、中止させることが可能なほどの票数は集められないとの見方が多い。上院でも法案変更が要求される見通しだが、EU離脱を阻止する結果にはならないもようだ。

 こうしたなか、スコットランドのスタージョン行政府首相は、最高裁の決定はスコットランドを対等のパートナーとして扱っておらず、独立住民投票が再度実施される見込みが強まったと表明した。スコットランドでは昨年の国民投票でEU残留派が離脱派を上回っている。

[ロンドン 24日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-中国BYDの欧州第3工場、スペ

ビジネス

再送-ロシュとリリーのアルツハイマー病診断用血液検

ワールド

仮想通貨が一時、過去最大の暴落 再来に備えたオプシ

ワールド

アルゼンチン中間選挙、米支援でも投資家に最大のリス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中