最新記事

インドネシア

スラバヤ沖海戦で沈没の連合軍軍艦が消えた 海底から資源業者が勝手に回収か

2016年11月28日(月)16時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

スラバヤ沖海戦の記念祝典に参加するインドネシア軍兵士 Didik Suhartono-REUTERS

<第2次大戦中、インドネシアのスラバヤ沖で日本軍が沈めた連合国の艦船の船体が、遺骨と共に姿を消した。海の底に沈んで回収できない遺骨は船を墓に見立てて永遠に保存するもの。イギリスやオランダはインドネシアに徹底調査を求めているが、いったい何が起こったのか>

 インドネシア・ジャワ島東部の都市スラバヤはインドネシア有数の港湾都市であると同時に海軍兵学校、海軍基地のある軍都でもある。第2次大戦中この軍都の北西約50キロの海域で日本海軍と連合国艦艇による海戦があった。「スラバヤ沖海戦」がその海戦で、日本側の勝利で連合国艦艇8隻が海の藻屑と消えた。

 2017年の「スラバヤ沖海戦71周年」の記念行事準備のため、2002年と2006年にそれぞれ民間人ダイバーが発見、確認した同海域の海底約50メートルに眠る7隻の連合国軍艦艇のその後の様子を確認するために、このほど国際合同チームのダイバーたちが改めて潜ったところ驚くべき事実が判明した。

 沈没して海底に横たわっていたはずのオランダ海軍の軍艦3隻、英国海軍の軍艦3隻、さらに2006年発見の米海軍潜水艦の計7隻のうち、潜水艦を含む5隻の船体が消えてなくなり、残る2隻もその大半が消失していたのだ。実際に潜ったダイバーたちによると、沈没した海底には何かを引きずったような形跡が残されていたという。

「沈没艦艇は戦死者の墓標」

 スラバヤ沖海戦ではオランダ海軍の軽巡洋艦「デ・ロイテル」「ジャワ」、駆逐艦「コルテノール」、英海軍の重巡洋艦「エクセター」、駆逐艦「エレクトラ」「ジュピター」「エンカウンター」、米海軍駆逐艦「ポープ」、潜水艦「パーチ」の計9隻が日本軍の攻撃で沈没した。

 このうち「ジュピター」と「ポーチ」を除く7隻の沈没した船体が海底で確認されていたが、今回の合同調査チームダイバーの潜水調査で「エクセター」「デ・ロイヤル」「ジャワ」「エンカウンター」「パーチ」の5隻の船体がほぼ完全に海底から消え、「コルテノール」と「エレクトラ」は船体の大半が失われていたという。

 連合国軍の記録などによると7隻の沈没艦艇は計2200人の海軍軍人の遺骨と共に海底に眠っているはずで、その遺骨の行方も船体とともに不明となっているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ最高値、銀行の好決

ワールド

CNN、23日にハリス氏とのタウンホール開催 トラ

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、一連の経済指標を消化

ワールド

ロシア、日本に抗議 米との合同軍事演習「容認できず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギリス人記者が見た、「メーガン妃問題」とは?
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 5
    北朝鮮製ミサイルに手を焼くウクライナ、ロシア領内…
  • 6
    南極「終末の氷河」に崩壊の危機、最大3m超の海面上…
  • 7
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 8
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 9
    【クイズ】ノーベル賞の受賞者が1番多い国は?
  • 10
    ウクライナには「F16が緊急にもっと必要」だが、フラ…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 3
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 5
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 6
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 7
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 8
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 9
    「核兵器を除く世界最強の爆弾」 ハルキウ州での「巨…
  • 10
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中