最新記事

戦争犯罪

国際刑事裁判所(ICC)を脱退するアフリカの戦犯たち

2016年10月20日(木)17時40分
コナー・ギャフィー

 ブルンジはICCから脱退する最初の国だが最後の国ではなさそうだ。アフリカの独裁者たちは以前から、ICCが自分たちを標的にしていると不満を抱いてきた。これまで人道に対する罪や戦争犯罪でICCに裁かれ有罪になった4人の被告人は、全員がアフリカ出身だ。9月にはマリ出身のイスラム過激派の元戦闘員アフマド・ファキ・マフディが、西アフリカのマリ北部を一時制圧していた2012年に世界遺産都市トンブクトゥの文化財を破壊した戦争犯罪に問われ、ICCが禁固9年の判決を言い渡した。

 6月にはアフリカ中部コンゴ(旧ザイール)の副大統領だったジャンピエール・ベンバが、2002年に中央アフリカに派遣した自身の部隊が犯した戦争犯罪と人道に対する罪で、ICCに禁固18年の量刑を言い渡された。ベンバは判決を不服として上告している。ICCが進行中の3件の裁判すべてにアフリカ出身者が関わっており、裁判に向けて予備調査が進んでいる10件のうち9件もアフリカ諸国に関連する事案だ。

 アフリカからの反発が強まる中、ブルンジの次にICCを脱退する可能性があるのはどの国だろうか。

スーダン

 ICCの被告人の中でも最高位の指導者といえば、スーダンのオマル・ハッサン・アハメド・バシル大統領だ。ICCは2009年3月、現職の国家元首に対しては初の逮捕状を発行した。ICCが指摘したバシルの容疑は、戦争犯罪や人道に対する罪、ダルフール地方での大量虐殺だ。スーダン西部のダルフールで2003年にアラブ系の中央政府に対抗して黒人の住民が蜂起して始まったダルフール紛争は、死者が数十万人に上ったと推計される。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、スーダン政府軍が住民に対して化学兵器を使用した疑いが強いとする報告書を発表したが、スーダン政府は否定した。

 バシルは4月、逮捕状は無効だと一蹴したうえ、ICCは「政治利用された法廷」だと批判した。アフリカ諸国はICCの逮捕状発行を無視するかのように、バシルの自国訪問を歓迎している。最も注目を集めたのは、2015年6月に南アフリカで開催されたアフリカ連合(AU)首脳会議だ。ICC加盟国である南アフリカの裁判所が出国禁止命令を出したにも関わらず、バシルは出国を認められて易々と帰国した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米アップル、移民捜査官追跡アプリを削除 トランプ政

ワールド

独ミュンヘン空港、ドローン目撃で一時閉鎖 17便欠

ワールド

お知らせ=重複記事を削除します

ビジネス

ムーディーズ、ニデックの格付けA3を格下げ方向で見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中