最新記事

フィリピン

ドゥテルテは「負傷した司法省職員を射殺した」

2016年9月16日(金)14時53分
シボーン・オグレイディ

Jorge Silva- REUTERS

<麻薬犯罪に絡んだかもしれない容疑者の殺害を容認し、6月以来3000人を殺させたとされるフィリピンのドゥテルテ大統領は自らも政府職員を射殺していた──ドゥテルテ配下の元暗殺部隊員が証言したが、ドゥテルテ側は、殺人も暗殺部隊が存在したことも容疑者の殺害容認も否定、闇は深まる一方だ>

 今年6月の就任以来、フィリピンのドゥテルテ大統領の過激な言動は国際社会でもすっかりおなじみとなった。

 バラク・オバマ米大統領や駐フィリピン米大使、ローマ法王(教皇)フランシスコをフィリピン語で「くそ野郎」と侮辱し、国連からの脱退を示唆し、南部のミンダナオ島に駐留する米軍部隊には「出ていけ」と言ったのは既に有名だ。

 そこへ、ドゥテルテについて知っておくべき新たな過去が暴露された。ダバオ市長時代、法務省の職員をサブマシンガンで撃ち殺した疑いが浮上したのだ。

【参考記事】アブサヤフのテロに激怒、ドゥテルテ大統領がまた殺害容認か

 麻薬犯罪の一掃を掲げたドゥテルテ政権発足後、フィリピンでは3000人以上が司法手続きを経ずに殺害された。その実態を調査するために上院が開いた公聴会で15日、暗殺部隊の元隊員が証言し、1993年にドゥテルテが法務省の職員をイスラエル製短機関銃ウジで射殺したとぶちまけた。

大統領周辺は否定

 証言したのはダバオ市で極秘に活動していた元暗殺隊員のエドガー・マトバトだ。彼はテレビ中継された公聴会で、ドゥテルテが関与したとする殺人の状況について語った。それによると、暗殺部隊は自分たちの通行を阻止しようとした法務省の職員らと銃撃戦になり、ジャミソラという名前の職員を負傷させた。現場に駆けつけるなり、まだ息があったジャミソラに向けて弾倉2つ分の銃弾を発射しとどめを刺したのは、当時市長だったドゥテルテだったというのだ。

「我々の任務は麻薬密売者やレイプ犯、強奪犯を殺害することだった」と述べたマトバトは、暗殺部隊の活動期間はドゥテルテが7期にわたりダバオ市長を務めた1988~2013年の間だったと明らかにした。

【参考記事】ドゥテルテ大統領下のフィリピン麻薬戦争、死者の山に口閉ざす人々

 ドゥテルテの市長時代に、ダバオ市の犯罪は劇的に減った。だがそれは彼が超法規的なやり方で大量の犯罪者を殺害したからだという批判も根強い。

 フィリピンのヴィタリアノ・アギレ司法大臣は、マトバトについて「明らかに嘘をついている」と批判した。

 マーティン・アンダナール大統領報道官は、フィリピン政府が過去に調査した結果、暗殺部隊の存在すら確認されておらず、ドゥテルテが暗殺を容認していた事実はなかったと一蹴した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米単位労働コスト、第3四半期改定値は0.8%上昇に

ワールド

イスラエル、シリア南部に防衛地帯設置へ ゴラン高原

ビジネス

過剰政府債務、25年に市場揺るがす恐れ=BIS報告

ワールド

ブラジル大統領、脳出血で緊急手術 経過は良好
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?
  • 2
    「男性ホルモンが高いと性欲が強い」説は誤り? 最新研究が示す新事実
  • 3
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主役の座を奪ったアンドルー王子への批判も
  • 4
    無抵抗なウクライナ市民を「攻撃の練習台」にする「…
  • 5
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ジンベエザメを仕留めるシャチの「高度で知的」な戦…
  • 8
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
  • 9
    シリア政権崩壊...反体制派の電撃進軍を可能にした「…
  • 10
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 5
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 6
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 7
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 8
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 9
    ついに刑事告発された、斎藤知事のPR会社は「クロ」…
  • 10
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中