最新記事

米民主党

好調ヒラリーを襲う財団疑惑

2016年9月1日(木)15時10分
ジョシュ・ブアヒーズ

では、いま再びニュースになっている理由は?

 最近、国務長官時代のクリントンの側近とクリントン財団幹部が交わしていた一連のメール内容が公開された。ヒラリーの率いていた行政機関と、彼女の名前を冠する財団との関係を示すものだが、そこから浮かび上がる構図はあまり見栄えのいいものではない。

 例えば09年のメールで、クリントン財団幹部のダグラス・バンドは、財団に大口の寄付をしたレバノン系ナイジェリア人富豪を、国務省のレバノン専門家に紹介したいと依頼していた。クリントンの側近フーマ・アベディンが役に立てそうだと示唆すると、バンドはすぐに駐レバノン米大使に電話してほしいと応じた。「非常に重要な案件だ」と、バンドは付け加えた。

 AP通信は国務長官就任以来2年間のヒラリーの公式日程を分析し、彼女が面会したアメリカや外国の政府関係者を除く民間人の半数以上がクリントン財団か、財団の国際プログラムに寄付をしていたと結論付けた。85人の寄付者が総額1億5600万ドルを寄付している(ヒラリーは、財団に総額1億7000万ドルを寄付した少なくとも16カ国の外国政府代表者とも会談しているが、この数字には含まれていない)。

【参考記事】アメリカの外交政策で攻守交代が起きた

寄付者に見返りがあったという証拠は?

 確かな証拠はないが、それで安心できるわけではない。クリントン夫妻は、直接の見返りがなかったとしても常に疑問の残るシステムをつくり上げた。その点が問題だろう。

寄付者と会うのはなぜ悪い?

 確かにワシントンで行われる決定には、優先待遇が絡んでいる可能性が常にある。議員や大統領は寄付者と頻繁に会い、大口ともなれば大々的にもてなすことが普通だからだ。

 だがヒラリーは特殊な立場にあったし、今もそうだ。企業や外国団体は彼女の選挙陣営だけではなく一族の財団に寄付することができた。他の候補に対しては直接できないことだ。

 当時彼女がアメリカの外交官として最高の地位にあり、今はさらに国の最高責任者を目指しているということから、利益相反の度合いはさらに深刻になる。

既にクリントン夫妻は、企業と外国人からの寄付の受付中止を発表したはずだが。


 ビルは先々週、ヒラリーが本選挙に勝った場合には、企業と外国人からの寄付の受け入れを中止すると発表した。だが、ヒラリーが当選するまでは受け入れる。クリントン財団の「利益相反」の恐れは低くなるとしても、ゼロになるわけではない。

 クリントン夫妻は、ヒラリーが当選したら財団の寄付受け入れについて自主的に制限を設けるとしている。だがこの約束は、外国の後援者が後で見返りを受けられるという認識の下に大統領選前に寄付をすることを妨げるものではない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中