最新記事

米民主党

好調ヒラリーを襲う財団疑惑

2016年9月1日(木)15時10分
ジョシュ・ブアヒーズ

Aaron Bernstein-REUTERS

<クリントン一家で運営する慈善団体との「利益相反」が問題となっている。このスキャンダルはヒラリーが大統領になってもくすぶり続ける>(最近のヒラリーの支持率は揺るぎないが)

 AP通信は8月、米民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンが国務長官在任中に、クリントン財団の大口寄付者と面会を繰り返していたと報じた。

 共和党はこの疑惑を、クリントンにホワイトハウスを任せられない証拠として取り上げ、一方の民主党は些細な問題としてやり過ごそうとしている。今も進行中の入り組んだスキャンダルを読み解いてみると――。

なぜ疑惑は起きたのか。

 ヒラリーは支持率で大幅にリードしているが、まだ当選したわけではない。共和党はクリントン財団疑惑のようなスキャンダルがヒラリーへの信頼をゆっくりと損なわせ、支持率低下につながることを願っている。

 最近公表されたヒラリーの国務長官在任中の文書は、クリントン財団と世界中にいるその大口寄付者について、そして両者の関係がヒラリーの国務長官としての仕事に影響を与えた可能性について、大きな懸念を引き起こし続ける。

 この疑惑はヒラリーがホワイトハウスを目指す上で大きな問題であり、彼女が当選した場合には政権にとって無視できない問題になるだろう。

【参考記事】アメリカの「ネトウヨ」と「新反動主義」

クリントン財団の疑惑は前にも聞いた。済んだ話では?

 ある意味ではそうだ。かなり前からクリントン財団は、ヒラリーの政敵やメディア、国民にとって関心の的だった。

 09年、上院議員だったヒラリーの国務長官指名が濃厚になると、反対陣営はクリントン財団の存在が国務長官の仕事を全うする上で「利益相反」を生むと指摘。クリントン財団はそれまで内密にしていた寄付者のリストを公表することに合意したが、そこには新興実業家や外国の王族・政府が含まれていた。

 こうした懸念が昨年、ヒラリーの大統領選出馬が確定した際に再び浮上した。ヒラリーと元大統領の夫ビルが、財団に大口寄付をした多くの団体で講演を行い、高額の報酬を受け取っていたという新たな問題も持ち上がった。

 クリントン夫妻と後援者の緊密な関係は、保守系ジャーナリストのピーター・シュワイツァーが昨年出版した『クリントン・キャッシュ』(邦訳・LUFTメディアコミュニケーション)でも大きなテーマになっていた。この本はヒラリーの疑惑について決定的な証拠を提示しているわけではない。だが彼の著書がきっかけとなって、メディアがクリントン財団に関心を向けたことは確かだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中