最新記事

南シナ海

フィリピン、ASEAN国際会議直前に中国船の南シナ海航行写真公開

2016年9月7日(水)18時19分

 9月7日、フィリピン国防省は7日、領有権争いが続く南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)付近を航行する中国船とみられる写真を、ラオスで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳が中国の李克強首相と会談するわずか数時間前に公表した。写真は中国の艦船が集まる南シナ海のスカボロー礁。3月撮影(2016年 ロイター/Planet Labs)

フィリピン国防省は7日、領有権争いが続く南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)付近を航行する中国船とみられる写真を、ラオスで東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳が中国の李克強首相と会談するわずか数時間前に公表した。

写真公表のタイミングについては説明はなかった。フィリピン政府は4日、同礁の周囲を航行する中国船舶の増加について「重大な懸念」を表明し、駐マニラ中国大使に説明を求めていた。

あるフィリピン当局者は、写真と地図の公開は、ASEAN首脳会議に出席するロレンザーナ国防相の指示だと明らかにした。

資源が豊富な南シナ海は、中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイが、一部または全部の領有権を主張しており、地域の緊張を高める火種となっている。フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイの4カ国はASEANに加盟している。

今回公開された10枚の写真と地図は、主にASEAN首脳会議取材のためにベトナム入りしている記者に向けて電子メールで送付された。南シナ海の領有権問題が公式に議論されるかどうかは不明だが、ASEAN首脳は7日に李首相と会談する予定だった。

今回の動きは、フィリピンのドゥテルテ大統領が、同盟国である米国のオバマ大統領を侮蔑する発言を行ったことで、米比首脳会談が中止された後に起きた。

中国は、年間5兆ドル(約510兆円)を超える国際貿易を支える戦略的な海路である南シナ海をめぐる領有権紛争を煽っているとして、米国を繰り返し非難してきた。

米国は、南シナ海の主権をめぐる問題でどの立場も取らないと表明している。しかし、中国が実効支配をする島々付近で「航行の自由」作戦に基づく米軍艦の航行を実施し、中国の怒りを買っている。その一方で、中国はそこでの軍事プレゼンスを強化している。

<領有権問題で揺れる岩礁>

スカボロー礁は単に海面から突き出た数個の岩に過ぎないが、その穏やかな水域と豊かな漁場は、フィリピンにとっての重要性を持つ。フィリピンは、同礁での漁業活動を中国が妨害することは国際法に反すると主張している。

中国とフィリピン、ベトナムにとっての伝統的な漁場であるスカボロー礁について、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は7月、どの国も主権を有していないとの裁定を下した。この裁定により領有権紛争はさらに重要性を増している。中国は裁定の受け入れを拒否している。

ドゥテルテ大統領は中国が裁定を順守するよう求めているが、ラオスにおける会議でこの問題を取り上げないことを約束していた。同大統領は、2国間協議を通じた問題解決を望んでおり、ラモス元大統領を特使として先月香港での中国代表との会合に派遣している。

ロイターが5日入手したASEAN首脳会議の声明草案では、南シナ海問題に関連する8項目が含まれていたが、裁定についての記述はなかった。

しかし、ロレンザーナ国防相は、首脳会議に先立ち、フィリピン空軍機がスカボロ―礁上空を飛行し、通常より多くの中国船団を発見したことを明らかにした。同礁をめぐっては、中国が2012年以降実効支配を続けている。

同国防相は、沿岸警備艇に加え、中国船6隻が存在していたことは「深い懸念材料だ」と述べた。



[ビエンチャン 7日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」

ワールド

米、インドネシアに19%関税 米国製品は無関税=ト

ビジネス

米6月CPI、前年比+2.7%に加速 FRBは9月

ビジネス

アップル、レアアース磁石購入でMPマテリアルズと契
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中