最新記事

海外ノンフィクションの世界

歯磨きから女性性器切除まで、世界の貧困解決のカギは「女性の自立」にある

2016年8月25日(木)17時40分
松本 裕 ※編集・企画:トランネット

行動を起こすためのヒントを提示する一冊

 日本人は「ボランティア慣れ」していない、とはよく聞く話だ。たしかに、寄付やボランティアが生活に根付いている欧米に比べると、日本でボランティア文化が浸透しているとは、まだまだ言えない。

 そのため日本では、何をすればどこにいるどんな人たちの役に立てるのか、自分にも何かできることがあるのか、行動を起こすためにはまずどうすればいいのか、といった基本的なことがわからず、結局何もせずに終わってしまう人が多いのではないだろうか。

「熱効率の良い改良型コンロを普及させる」「溜めた雨水をろ過や日光消毒で安全な水に変える」――本書『WOMEN EMPOWERMENT 100』に掲載されているアイデアのすべてが、日本にいる私たちに実行できたり、あるいは、先進国である日本国内の貧困問題にも役立ったりするとは限らない。

 それでも、色鮮やかな数多くの写真とともに紹介されている100のアイデアの中にはきっと、行動を起こすためのヒントがあるはずだ。「こんなことで世界の貧しい女性たちの力になれるんだ!」という驚きが、ボランティアとして一歩を踏み出す力になる。

印象的なセンテンスを対訳で読む

 最後に、本書から印象的なセンテンスを。以下は、『WOMEN EMPOWERMENT 100』の原書と邦訳からそれぞれ抜粋した。

●The premise of [this book] is that anyone can do something to help people help themselves. However modest the effort, it makes a difference to someone.
(この本の大前提は、人は誰でも、誰かが困難を切り抜けようと行動する手助けをできる、という点にあります。どれほどささやかな努力でも、誰かに影響を与えることはできるのです)

●People living on a few dollars a day don't have a reliable cash flow. Some days there may be a bit more, but on other days much less..... That people survive under such difficult circumstances is a testament to human resilience and skill.
(1日数ドルで生活している人たちには、安定した収入などありません。昨日よりちょっと多く稼げた日もあれば、ずっと少ない日もあります。......ただ、このように厳しい状況でも人が生きていけるということは、人間の回復力と能力の証明でもあるのです)

●Another genre I avoided was disaster photography documenting suffering, starving mothers and children in lines awaiting food and humanitarian relief. These are heartbreaking, and important for conveying information the world needs to know, but they miss the narrative of women's capabilities, strength, and resilience. That is what I have strived to communicate in [this book].
(同様に使用を避けたのが、飢えに苦しむ母や娘が救援活動の食料配布の列に並んでいるような、典型的な災害の写真でした。こうした写真を見ると心が痛みますし、世界が知るべき情報を伝えるうえで重要な役割を果たしますが、女性の能力や強さ、回復力を伝えることはできません。この本で、私はそうした女性の力強さを伝えたかったのです)

――世界の困窮した地域に住む貧しい人々は、典型的な貧困のイメージを伝える写真で見るように、皆がいつも打ちひしがれているわけではない。しっかりと前を向き、自分の力で未来を切り開こうとしている女性は大勢いるのだ。

◇ ◇ ◇

 本書の冒頭には、「ティクン・オラム(世界の修復)」というヘブライ語のことばが記されている。そこに込められているのは、砕け散ってしまった世界を修復していく義務は私たち一人ひとりにある、という思いだ。


『WOMEN EMPOWERMENT 100
 ――世界の女性をエンパワーする100の方法』
 ベッツィ・トイチュ 著
 松本 裕 訳
 英治出版

©トランネット
trannetlogo150.jpg

トランネット
出版翻訳専門の翻訳会社。2000年設立。年間150~200タイトルの書籍を翻訳する。多くの国内出版社の協力のもと、翻訳者に広く出版翻訳のチャンスを提供するための出版翻訳オーディションを開催。出版社・編集者には、海外出版社・エージェントとのネットワークを活かした翻訳出版企画、および実力ある翻訳者を紹介する。近年は日本の書籍を海外で出版するためのサポートサービスにも力を入れている。
http://www.trannet.co.jp/

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米2月ADP民間雇用、予想上回る6.3万人増 過去

ワールド

イラン軍艦がスリランカ沖で沈没、米潜水艦が攻撃 少

ビジネス

フィッチ、インドネシア見通し「ネガティブ」に下げ 

ワールド

中国政協開幕、軍トップ張氏ら政治局員2人が姿見せず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 9
    イランへの直接攻撃は世界を変えた...秩序が崩壊する…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中