最新記事

中国政治

中共建党記念・習演説にVOAがぶつける――「日本軍と共謀した毛沢東」特集番組

2016年7月4日(月)16時35分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

生放送中に飛び込んできた大陸ネットユーザーの生の声

 途中まで順調にいったが、なんとその番組では、途中から「中国大陸にいるネットユーザーが直接テレビ局に電話をかけてきて意見を言う」というスタイルになっていたらしい。

 ライブなので、中国大陸各地のネットユーザーのナマの声がいきなり飛び込んできた。

 そのようなことを知らされていなかった筆者は非常に驚き、戸惑った。

 罵倒されるであろうことは分かっているからだ。

 中国にはGreat Fire Wall(万里の防火壁)があって、西側の情報をシャットアウトしているが、これらのネットユーザーは「壁越え」というソフトを用いてVOAを視聴し、電話まで掛けてきている。

「壁越え」をするのは、おおかた民主運動家ではあるが、実は政府のためにネットで意見を述べる「五毛党」が紛れ込んでいて、中国共産党体制を批判するような言動に関しては、激しく反対するという「役割」を、中国政府は対応策として仕込んでいるのを知っている。

 その中に入りこむのは「ごめんだ」という気持で、焦りながら対策を考えようとした。いっそ、電話を切ってしまいたいという衝動に駆られた。しかし電話を切るということは、生放送で出演しているテレビ番組を、途中でいきなり退場することに相当する。さすがにそれはできないと自分に言い聞かせながら焦った。

 一方、現実は容赦なく進み、案の定、「日本の賠償問題」「日本政府の中国への謝罪がないのは、日本がアメリカに負けたと思っているのであって、中国には負けたと思ってないからだろう」とか、「安倍政権への批判」など、筆者が分析している対象とは関係のないことまでが飛び込んできた。

 中国大陸の遼寧省、上海市、広西チワン族自治区、天津市......など、数多くの場所から(匿名だろうが)名前を名乗って、中にはたどたどしく、中には待ち構えていたとばかりに声を荒げる者もいる。おまけに中国大陸からの電話をワシントンで受け、それを東京で電話越しに聞くので、実はよく聞き取れない。

 全体的に言えば「よくぞ真実を明かしてくれた」という声が大半ではあるが、何十年ぶりかの罵倒に、激しい疲れを覚えた。

中国大陸の民主化のために中国語放送をしていたVOA

 番組が終わってから、早速ワシントン本局のキャスターに電話をして、「なぜ事前に言ってくれなかったのか」と詰め寄ったところ、「ああ、言ってなかったかしら......。それは申し訳ない。ごめんなさい」とすなおに謝った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米北東部に寒波、国内線9000便超欠航・遅延 クリ

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中