最新記事

テクノロジー

携帯の元巨人ノキアが高機能スマートフォンで返り咲き?

2016年7月27日(水)15時32分
アンソニー・カスバートソン

Kacper Pempel-REUTERS

<あのノキアが帰ってくる! ガラケーで世界市場シェア40%を支配しながらiPhoneに技術で敗れた絶滅種のはずだった。噂ではそれが、ハイエンドで「ノキア感」たっぷりのスマートフォン2機種を投入してくるという>

 そう遠くない昔、フィンランド企業のノキアが世界の携帯電話端末市場の4割を占めていたことをご存じだろうか。利益を稼ぎまくっていた2000年、ノキアの株式時価総額はフィンランドのGDPの2倍に達した。わずか10年後、ノキアは携帯電話事業を失っていた。

 ノキアの凋落は、ハイテク業界の基準からいっても唐突だった。2007年のiPhone発売とともに爆発したモバイルインターネットの成長スピードについて行けなかったのだ。2014年4月、同社はマイクロソフトに携帯電話事業を売却した。今日ノキアの時価総額は、かつての10分の1程度だ。

【参考記事】ノキア+MSの新製品はiPhone以上

 だが激動期が去った今、ノキアは再び携帯電話市場のトップを狙う野心に燃えている。ノキア専門ブログ「ノキア・パワーユーザー・ブログ」が先週、ハイエンドのアンドロイド端末2機種を今年中にも出すらしいという噂を報じた。新機種はメタリックのプレミアム・デザインで「有名なあのノキア感」も健在。アップルやサムスンの最上位機種のライバルになる可能性が高いという。

【参考記事】iPhoneもしのぐ世界最強ケータイ

 この噂自体の真偽はともかく、近い将来ノキアのスマートフォンが市場に出回るのは間違いなさそうだ。ただしそれは、技術的には「ノキアの」端末とは呼べないものになるだ。

ベンチャーを通じて再起図る

 今年5月、ノキアはヨーロッパのベンチャー企業、HMDグローバルと10年の独占ライセンス契約を結び、新世代のノキア・ブランドのスマホとタブレットを作らせることにした。HMDグローバルは同時に、マイクロソフトにノキアが売却した初心者向けの携帯電話端末事業を3億5000万ドルで買い戻した。

【参考記事】ジョブズがiPhone4のミスを認めるとき

 HMDグローバルは、他にも特許やデザインなどノキアの一連の知的財産の多くを使用する権利を獲得した。調査会社IHSテクノロジーの携帯アナリスト、イアン・フォッグによれば、彼らの目標は新しい端末がノキア製と寸分も区別がつかないようにすることだという。

「ノキアは、HMDグローバルが成功すれば大きな報酬を得られるが」と、フォッグは本誌に言う。「万一失敗しても自分は傷つかないよう距離を置ける」

 この低リスクのやり方は、ノキアが真に生まれ変わった印なのか、さらなる凋落の印なのか、もうすぐ明らかになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャーによる株買い増し、「戦略に信任得てい

ビジネス

スイス銀行資本規制、国内銀に不利とは言えずとバーゼ

ワールド

トランプ氏、公共放送・ラジオ資金削減へ大統領令 偏

ワールド

インド製造業PMI、4月改定値は10カ月ぶり高水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 8
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中