最新記事

ニュースデータ

マンガだけじゃない! 日本の子どもの読書量は多い

2016年7月19日(火)15時10分
舞田敏彦(教育社会学者)

 比較の対象を増やして見てみる。青少年が嗜好するコミック(マンガ)とフィクション(小説)の座標上に、世界の74カ国を配置したグラフを作ってみた<図2>。

maita160719-chart02.jpg

 日本は、グラフ上の右に外れた位置にある。日本の子どものマンガ嗜好は、世界で最も高い。他の先進国は左側にあり、マンガよりも小説が好んで読まれている。数としては、そのような社会の方が多い(斜線より上)。

 これをどう見るかだが、ストーリーを絵入りで分かりやすく伝えるマンガは日本発祥の誇るべき文化だ。この中にも活字はあり、一概に悪いとは言えない。筆者の中学時代の国語教師は「マンガでもいいから読め」とよく言っていた。

 しかし、親切な絵ばかりに頼っていると想像力が訓練されないし、直観(印象)依存型の思考回路ができてしまうという問題もある。マンガばかり読んでいる子どもは人の話を長く聞けないという説もあるが、そのような影響も否定できないだろう。

【参考記事】投票率が低い若者の意見は、日本の政治に反映されない

 日本は、マンガだけでなく小説を読む頻度も他の先進国より高いが、グラフでの位置がもっと上にシフトすると理想的だ。学校図書館の利用時間を延長する、子どもの生活にゆとりを持たせるなど、やるべきことはいろいろある。強制的な「朝の10分間読書」だけが有効ではないはずだ。

 子どもの読書活動の推進に関する法律では、「すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない」と定めている(第2条)。間もなく夏休みの時期に入るが、この理念が実現されるよう教育関係者の尽力を望みたい。

<資料:OECD「PISA 2009」

この筆者の記事一覧はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ南部ザポリージャで29人負傷、ロシア軍が

ビジネス

シェル、第1四半期は28%減益 予想は上回る

ワールド

「ロールタイド」、トランプ氏がアラバマ大卒業生にエ

ワールド

英地方選、右派「リフォームUK」が躍進 補選も制す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中