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バングラデシュ

ダッカ人質テロの背後にちらつくパキスタン情報機関の影

2016年7月13日(水)16時10分
山田敏弘(ジャーナリスト)

Adnan Abidi-REUTERS

<ダッカのテロ事件に関して、複数のバングラデシュ政府上層部がパキスタン情報機関の関与の疑いに言及している。確実な証拠は示されていないが、パキスタンにはバングラデシュ現ハシナ政権に揺さぶりをかけたい十分な理由はある>(写真はダッカテロの発生当時、現場の警備あたるバングラデシュ警察)

 今月1日、バングラデシュの首都ダッカで、若者の武装集団による大規模なテロ事件が発生した。日本人7人を含む外国人ら20人の人質が殺害されたことで、日本でも大きく報道された。

 その動揺も収まらない3日、在パキスタンのバングラデシュ高等弁務官事務所がこんな発表をした。パキスタン政府に対し、バングラデシュのシェイク・ハシナ首相の顧問を務めるゴウェル・リズビ氏が「インドメディアによる報道は完全な『ナンセンス』である」と強調したという書面を送付したというのだ。

 このインドメディアの報道とは、インドのテレビ局がリズビの発言を引用した記事のことだ。その内容は、「リズビが、カフェへの攻撃の背後にパキスタンのISIが存在すると非難した」というもの。つまり、首相の側近がパキスタンのISI(軍統合情報局=パキスタンで政府以上に権力をもつと言われる諜報機関)がテロに関与していると述べたというのだ。

 だがリズビはそんなコメントはしていないと主張し、「大至急」パキスタンに弁明の書面を渡すようバングラデシュ高等弁務官に指示した。メディアとリズビの間にどんな齟齬があったのかは明らかにされていないが、いずれにせよ穏やかではない。

【参考記事】バングラデシュ人質事件、日本はこれから何ができるのか?

 このエピソードは、バングラデシュ、インド、パキスタンの密接な関係性を如実に示している。ダッカ人質テロによって、この3カ国の間に緊張が走った。というのも、この3カ国には複雑な思惑が絡み合っているからだ。そしてその思惑の深層を知れば、報道とは違った事件の背景が浮かんでくる。

 そもそも、インドメディアが報じられたように、パキスタンがバングラデシュのテロに関与するようなことがあり得るのだろうか。

 実はバングラデシュでは、パキスタンの関与を指摘する政府高官がリズビ以外にもいる。リズビとは別の首相顧問であるホセイン・トウフィク・イマム氏だ。イマムはメディアの取材に、「人質を山刀などで殺していることから見ても、地元の違法なイスラム過激派組織ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)が関与したと考えられる」と語っている。その上で、「ジャマートゥル(JMB)とパキスタンのISIのつながりはよく知られている。ISIはバングラデシュの現政権を転覆させたがっている」という爆弾発言もした。

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