最新記事

ワークプレイス

生活ありきの仕事環境がクリエイティブ・カルチャーを生む

2016年7月8日(金)19時46分
WORKSIGHT

WORKSIGHT

「生活の一部としての仕事」。人間本来のあり方を模索するスタートアップ[Envato] (写真:写真中央はスタンディングスペース。普段はここで開発責任者が常駐、フロア中央から開発全体を統括している。)


[課題]  ベンチャー企業としての持続的な成長
[施策]  仕事と生活を分けないフレキシブルなワークスタイルをつくる
[成果]  豪州の「最も働きたい会社」として評価される

 オーストラリアを拠点にクリエイターの制作物を仲介するデジタルマーケットプレイスを展開するエンバト。彼らはまたオーストラリアの「働きたい会社」ランキング上位の常連組である。

 人気の理由は、「仕事は生活の一部」との哲学に裏打ちされたワークスタイルだ。彼らのオフィスに足を踏み入れた者は直感できるだろう。「木」をモチーフとしたセミクローズドスペースや、地元アーティストの手による壁面の絵画は、会社の「外」と「内」の境界を無理なく崩している。同社HRディレクターのジェームズ・ロウ氏は言う。

「かつては仕事と生活が分かれていて、だからこそワーク・ライフ・バランスが注目されました。でも時代は変わった。いまや生活の一部として仕事があり、また家族や人生の楽しみがあると考えるべきでしょう。オフィスを設計するにあたっても、仕事と生活を分けない、フレキシブルなワークスタイルを目指しました」(ロウ氏)

【参考記事】クオリティ・オブ・ライフの尊重がゲームの未来を切り開く

フレックス制や在宅勤務はもちろん自作デスクの使用もOK

 スタンディングで仕事をするもよし、自分の背丈に合ったデスクを自作するもよし。「足りないものがあれば作ればいい」というカルチャーが浸透しており、TV会議システムも、ラップトップとデジタルカメラで自作してしまうほど。

 コアタイムは10時から16時と余裕があり、社員は朝夕を思い思いに過ごしている。週に1度は在宅勤務ができるルールだが、さらに頻度を増やしていく予定だ。仕事の成果さえ上げていれば、時間の使い方は自由。子供の送り迎えや家事、通院や趣味、その合間に仕事をすればいいのである。

 社内キッチンであえてフルーツと水だけに絞り食事を提供しないのも、「残業しないといけないと感じさせてしまうから」とのこと。社員の生活時間を削る要素は、状況が許す限りゼロに近づける方針だ。

wsEnvato-1.jpg

(左上)100年前にはワインの保管庫として使用されていた建物。(左下)全員が利用するカフェテリアに飾られた社員たちの顔写真。(右)社員が自分の背丈に合わせて自作したスタンディングデスク。「足りないものは自分でつくる」のが同社のカルチャー。

wsEnvato-2.jpg

キッチンスペース。新鮮な果物や飲料は置いてあるが、食事は提供しない。「残業しないといけないと感じてしまう」ためだという。

wsEnvato-3.jpg

地階にある中庭は緑豊か。オフィスのデザインコンセプトが木であるように、「外」にある自然を「中」に取り込む発想。

wsEnvato-4.jpg

至る所にイメージボードが設置されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ビジネス

再送-〔ロイターネクスト〕米第1四半期GDPは上方

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中