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悪臭放つアフリカ連合(AU)も解体せよ

2016年7月11日(月)18時15分
ジョージ・アイッティー(米自由アフリカ財団理事長)

 当然ながら、AUは設立来の15年間でほとんど何も達成していない。年1回の首脳会議では荒唐無稽なコミュニケを発表するだけで、あとは恥知らずの独裁者同士でシャンペンを酌み交わし、互いの長寿を讃え合うのが恒例だ。2011年にリビアが内戦状態に陥ると、AUは首脳会議議長を務めるギニアのテオドロ・オビアン・ンゲマ・ンバゾゴ大統領を派遣した。アフリカでも最長記録を誇る独裁者オビアン・ンゲマを、紛争収拾と「民主化への移行」を助けるために送ったのだ。

 AUはこれまでに1度も外交的に紛争を解決したことがないし、AUが平和維持軍を送った先では、スーダンのダルフールにしろソマリアにしろマリにしろ、一向に和平はこない。

【参考記事】「失敗国家」に軍事介入するな

 AUでは民主主義の定義も一致しない。AUの判定では、どんな選挙も「自由で公平」になる(最近、反政府の指導者を投獄したルワンダやウガンダ、コンゴなどを非民主的と非難することも、AUの高邁な「不干渉主義」に違反することになるのだから)。

 AUは経済政策でも無能だった。AUは自らの本部ビルを建てるお金もなかったので、エチオピアのアジスアベバに建設されたピカピカのビルの建設費2億ドルは中国に払ってもらった。

【参考記事】習主席、アフリカをつかむ――ジブチの軍事拠点は一帯一路の一環

 もちろん、腐敗した独裁者なら支払えただろう。たとえばスーダンのオマル・ハッサン・アフメド・アル・バシル大統領の資産は推定90億ドル。アンゴラ大統領の長女、イザベル・ドス・サントスでさえ個人資産は32億ドル。

 だが、本当に恥辱なのは本部の中で行われていること、あるいは行われていないことだ。AUは市場統合と道路、線路、通信などのインフラ建設を進めることで工業化を促進する役割を担っていた。そして、どちらにも見事に失敗した。

アフリカ版マーシャル・プランも失敗

 AUの惨憺たる「実績」のなかで唯一明るい部分があるとすれば、2001年に発表した「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」だろう。IMF(国際通貨基金)や世界銀行などの指図を受けずにアフリカがアフリカのために作った経済政策だ。主としてインフラ開発のために、西側から640億ドルの資本を呼び込むことに成功した。

 だが「アフリカ独自」を打ち出しながらも、NEPADは実は、第2次大戦後にヨーロッパを復興したアメリカのマーシャル・プラン(欧州復興計画)を下敷きにしていた。言うまでもなく、戦後のヨーロッパとアフリカは似ても似つかない。アフリカでは壊れたものを修復するのではなく、制度やインフラを一から作らなければならない。ナイジェリアの政治家で元国連アフリカ経済委員会事務局長のアデバヨ・アデデジが2002年に言ったように、「マーシャル・プランはアフリカのような低開発市場ではうまくいかない。アフリカに必要なのは新しいビルで、ビルの復旧でも再建でもない」

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